2018年02月12日

スリー・ビルボード

マーティン・マクドナー
フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル
ミズーリ州の田舎町。7か月前に娘を殺されたミルドレッドは、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。
署長の部下や町の人々に脅されても、彼女は一歩も引かず。やがて周辺で不穏な事件が次々と起こり、事態は思わぬ方へ動き始める。

本年度のアカデミー賞で主要6部門7ノミネートされており“台風の目”となるであろう作品。
タイトルは直訳で「3つの看板」。まさに その3つの看板から始まるストーリー。

「娘はレイプされて殺された」「犯人はまだ捕まっていない」「なぜ?ウィロビー署長」といった3つの看板。
広告を依頼したのは被害者の母。そんなんされたら 警察は、名指しされた署長はたまったもんじゃないよね。

でも これを普通に受け止めるなら、警察の捜査の怠慢というものが頭に浮かびます。
やがて それ以外の周辺情報が明かされていきます。

黒人に暴力を振るった過去があるディクソンという署員の存在。批判を受けた署長は実は大病を患っている。母親にはかなり意固地な面もある。

さらに母親と家族の関係、そして娘との会話。ディクソンの思想。署長がとったある行動。
そして母親の別れた元夫の存在。彼女を脅した街のゴロツキの男。体の小さなミゼット男の助け舟。そして看板を管理している若い広告屋の兄ちゃん。

物語が進むにつれて、それぞれの登場人物から受けていた印象が、ジワリジワリと覆されていきます。
翻弄されるという言い方もできるけど、そんな単純なものでもなく。
ずいぶんと、揺さぶられましたね。

その一番のポイントは、やっぱり広告屋の「オレンジジュース飲む?ストローもあるよ」というセリフかな。
あれにはかなりやられちゃったよね。

様々な物事、誰かに対する印象。
昨今、ネット上でちょっとした話題がでるだけで、多大なバッシングが寄せられることがあります。
でも 広い意味で そこに至る過程であるとか、晒される情報の切り取り方ひとつで、その伝わり方が全く変わってきてしまいます。

そして そのことを理解している輩の何と少ないこと。
そこにあった小さな記事だけで 全てを判断したと思いこみ、エゲツない非難に至ってしまうと。本質は全然違うのに。結果“炎上”。

そして人と人も 深くわかり合うことなく、上辺のことだけでいがみ合ってしまうことも多いですよね。

この映画はそれらの事象の反面教師にも思えますし。
人間って そんなに単純なものでもないし、ほんのちょっとしたことで、同じ方向を見つめることができるものなんでしょうね。

あのラストシーン。必ずしも美しいものってわけではなく。
ちょっとむず痒さも覚えたし、気恥ずかしくて微笑んでしまえたし。

とても不器用な人々の、どうにもいびつな他者との関わりを、よくぞここまでまとめ上げたなと。
ひとことでは表現しにくいけど、とても上手い映画であることは確かです。
やっぱアカデミー最有力か!?

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仇を恩で返していく物語
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2018年02月11日

羊の木

吉田大八
錦戸 亮、木村文乃、北村一輝、優香、松田龍平
さびれた港町・魚深(うおぶか)に移住してきた6人の男女。その受け入れを命じられた市役所職員の月末が知らされたのは、彼らは元殺人犯で 仮釈放させた受刑者を過疎化の進む町で受け入れるというプロジェクトだった。
そんなある日、港で死亡事故が発生。やがて町の人々の日常に、少しずつ狂いが生じていく。

『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八監督の最新作。
『がきデカ』の山上たつひこ&『ぼのぼの』のいがらしみきお によるマンガが原作なんだとか。

刑務所を出た殺人犯6人が とある地方都市で生活を始める…という、ざっくりとしたあらすじだけしかチェックしていませんでしたが。
都市が“身元引受人”となり、ある程度の生活基盤を保証して彼らを受け入れると。その結果 地方の過疎化解消にもつながるという導入部に妙に納得。
この時点では わたくしも「そういう政策もアリだな」と思っていた次第。

それにしても この6人がイイですね。みんなイイですね。
冒頭に登場した水澤紳吾演じる理容師。食堂でラーメン・餃子・チャーハンにガッツク姿に「シャバに出て食べたかったんだね」とは思いましたが。良かったらビールも〜という勧めは固辞してたけど。あとあと そのやりとりが響いてきますね。
憂いを含んだ優香さんの振る舞い、火照り方が とてもたまらない。市川実日子の他者と関わりを持ちたくないという雰囲気もらしさありました。

見た目からして いかにも〜と思わせる北村一輝に田中泯に潜む凄みと渋さ。
そして何より松田龍平の飄々とした風貌の奥に透けて見える危うさ。
いずれも素晴らしい。キャラクター作りが秀逸。

もちろん主演の錦戸亮も良かったですよ。全般的に 大きく感情を表さないキャラだったけど、無機質な感じを纏うことである種の“標準”を体現していたような。
わたくし的には 終盤の崖のあたりで首を絞められてる表情なんか印象に残ってます。
これに限ったことでもないけれど、ジャニーズの売れてる人って みんな上手ですよね。

あと木村文乃さんがキレイかったね。
やっぱこの人はロングヘアの方が雰囲気増すわと思いつつ。そもそも髪切ったのってずいぶん前じゃなかったっけ?というトコから、撮影時期もそれぐらい前なんだろうなと窺い知れたり。

それにしても それ以外のモブ的な役者さんたちも皆上手かったよね。
全ては吉田監督の手腕であり。おそらく 完成系に導いていく説明・指導の仕方が上手いんだろうなぁ。

無駄なシーンもなくジワジワと映像世界から逃れられなくしていくような見せ方、運び方。
のろろ様という民話に立像も気になりまくりだし。
後半の危険なシーンにもハッとさせられて。
役者にも映像にも引き込まれました。

ただテーマ性、メッセージ性が わたくしにはわかりにくかったとも感じまして。
6人の犯罪者。それぞれの個性はあるけど、あまりにも一貫性がなかったよね。

人を信じること。見た目。噂ばなし。経歴。
相手の どこまでを知って、どれだけ寄り添えるのか。

人それぞれ、どういう過去があって、どうしてこの街に来て。今がどんな状況で、これからどこへ向かうのか。
観客も試されるようなところもあるのだけど。

辿り着く先が 6人それぞれバラバラで。こっちとしては「じゃあどうなの?」「いったいどう受け止めればいいの?」と答えが出せないんだけども。
そういう意味でスッキリしない映画ではあると思います。

ただし。それこそが正解なんだろうね。
そもそも殺意があって人を殺めたものもいれば、思いがけず罪人になってしまった人もいるわけで。
実際に刑期を終えて(仮釈放で)シャバに出て、本当に更生できる人もいれば 再び罪を犯してそっちへ戻っていく者もいる。

何事も一律でレッテルを貼って身構えてしまうことも世の中にはあるけれど、必ずしもそういうものでもないと。そんなことを思い、考えることのできる映画だったのかな。
「それは市役所として?友達として?」というセリフが。なんなら友達という言葉の意味合いが胸を締め付ける作品でもありました。

最後に、チラシによれば“羊の木”とは西洋につたわる伝説の植物とのことだそうです。

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ひげ剃りコワすぎ
posted by 味噌のカツオ at 19:00| Comment(0) | ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月10日

RAW〜少女のめざめ〜

ジュリア・デュクルノー
ギャランス・マリリエ、エラ・ルンプフ、ラバ・ナイト・ウフェラ
厳格なベジタリアンの家に育ったジュスティーヌは、姉も在学する獣医学校に入った後、新入生の通過儀礼としてうさぎの生の腎臓を食べることを強要され、口にしてしまう。
その行為により彼女の本性が露わになり、次第に変貌をとげていくことになる。

なんでもトロント映画祭では失神者が続出したであるとか、一部ではリバースしても良いように“エチケット袋”が配布されただとか。いろんな意味で話題が先行している今作。
気になってはいましたが、さすがに上映館数の少ないことったら(笑)
そんな中 時間を合わせて見てきました。

テーマは邦題に付けられている通り「少女のめざめ」ということでしょうが。
少女のめざめであり 成長を表現するのに、そのフィルターとなるのが いわゆる“カニバリズム”というのはなかなかハードル高いっちゅうか、前代未聞っちゅうか。

ちなみにこれ、監督は女性なんよね。
それでこんなの撮っちゃうの?って向きもあるかもだけど、実際には監督自身が成長していく段階のなかで、自分ではない何者かになっていく感覚をひ表現したものらしいです。

わたくしは、内容について事前に予習をしっかりしていたこともあり、衝撃度合いは ほどほどに押さえられていたわけですが。
それでも気持ち悪いシーン、いくらか不快なシーンもありましたね。
でも決してそればっかりってわけでもなくて。

冒頭の事故のシーンから驚かされましたし。学校の寮での“先輩”らの洗礼も なかなかのものでしたし。
一方で立ちションやら脱毛やらはどう受け止めるべきかと困惑しつつ。と思ったところで とんでもない事態に陥って。
やがて覚醒していっちゃいます。

あとは かなり衝撃だったのが、主人公のルームメイトが寝てるのかと思ったら あんなことになっちゃってたとは。
でもあの場面って、酔いつぶれた女子が目覚めた際にベッドに男の人がいてて。まさか記憶の無いうちに やっちゃったのかと。
ところが わたしは何事もなくって。実際はお姉ちゃんがやらかしてた〜という感じに受け止められなくもないかな。
そんな受け止めしなくてもいいか。

そんなこんなで見てる間中、ずっと複雑な感覚が着いてまわってたけど。
最後の最後で またとんでもない現実を提示されちゃうという。

マッシュポテトに肉が入ってた時にオカンが激怒してたけど。
あれはあれで怒る理由があったんだな。親心だねぇ。

でもやっぱり、どんな思いがあるにせよ。獣医学を学ぶ場に放り込むのは諸刃の剣だと思うけどな。

かなりエグいアプローチではあるけども、表現の仕方としては決してハズしてはいないので。下手なわけではないので。映画として楽しむことはできる作品ではありました。
当然万人におススメはできませんがね。
posted by 味噌のカツオ at 22:43| Comment(0) | ラ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

デトロイト

キャスリン・ビグロー
ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー
1967年夏、デトロイトで暴動が発生。その2日目の夜、州兵集結地の付近で銃声が鳴り響いたという通報が入る。
デトロイト警察、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊がアルジェ・モーテルの別館に乗り込むが、数人の警官が捜査手順を無視して、モーテルの客たちに不当な強制尋問を始める。

「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」の女性監督キャスリン・ビグロー。
それらでも実在するハードなテーマを緊張感溢れるカタチで映像化してきました。

そして本作で描かれたのは1967年、社会への不満を抱く黒人たちが暴動を起こし、多くの犠牲者を出したアメリカ史上最大級の事件と言われる“デトロイト暴動”。

映画としては どのような経緯から暴動が発生し、何が行われ…そして肝となってくるのが、暴動のさなかに起きた“アルジェ・モーテル事件”ということですね。

黒人に対する厳しい取り締まり。それに反発する人々。そして(なぜか)それが暴動・略奪に発展。
事態を収束せんと動く警察。そして民間の警護隊という存在もあるのかな。

警察組織としても道理として、行き過ぎた行為には眉をひそめる向きもあるけれど。大きな組織の中には“差別主義”と言いますか、過激な方法論で職務にあたる者も存在して。

アルジェ・モーテルとは、そもそもがいろんな犯罪の温床と言いますか。ゴロツキが出入りしていたという話も目にしましたが。
そこにいた宿泊客(?)のいたずら心が警察を刺激して、結果取り返しのつかない事態へと発展していくわけですが。

外出禁止令の出ている夜の街に響く“銃声”。「警察は狙撃犯がいる」とアルジェ・モーテルを包囲。そこにいた者を並べて「銃を出せ」と尋問。
しかし そこで実際になり響いたのは銃ではなく、レースのスターターが鳴らすようなおもちゃの銃であって。誰も銃は所持していなかったと。

それでも執拗に尋問を止めない警察。その中で 一部のものが警察の手によって命を落とします。
やがて事態は収束することとなり、後に 実際その場で何が行われていたのかの検証・裁判となっていきます。

とにかく重々しい(悪い意味での)臨場感はあるのですが、個人的にはイマイチ乗り切れなかったというのが正直なところ。
なぜ あそこで捕らわれた者 誰一人も“真相”に言及しなかったのか。実際に使用されたおもちゃの銃は発見されなかったのか。

その辺りが昇華しきれず、モヤモヤっと引きずったままラストまでいってしまいました。

黒人たちや売春婦(思い込みだけど)に厳しいアイツにもイラっとするし、裁判の行方も何をかいわんやで。
コーラスグループのドラマティックスのストーリーに至るまで感じるところは多々あるにはあったけど、あの証言が現場でなされなかった点が納得できず。という引っ掛かりが残ってしまいました。

あらためて振り返ってみると、映画としての作りはとても真摯で。時代背景込みで心に迫る複雑な思いと緊張感。これは間違いなく表現されていましたが。
ただし、映画として面白かったかと問われると…そうまでは言えず。

今年のアカデミー賞でも おそらく目玉になるだろうと目されていたのが、結局評価を得られずで。
その理由が 昨今の差別問題やセクハラ・パワハラ問題とも関連付けて議論されていないことを鑑みるならば、率直にエンターテイメントとしては弱かったとの印象ではないでしょうか。

もちろんテーマ性も高いし、作りとしては申し分ないのだけれど。
心に爪痕を残したかというと、それほどでもなくて。どうにも惜しい作品だったかな。

余談ですが。あの悪い警察を演じたウィル・ポールターにはホントにイラッとしましたし。
裏を返せばそれだけ役者として見事だったわけで。これに関しては 手放しで素晴らしかったと言いたいね。
もう二度と見たくないとも思ってますわ。もちろん役柄の話ですよww
posted by 味噌のカツオ at 14:23| Comment(0) | タ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月30日

祈りの幕が下りる時

福澤克雄
阿部 寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈
滋賀県に住む女性の絞殺死体が東京都葛飾区のアパートで発見される。その住民の男も行方不明になっていた。やがて捜査線上に浮かぶ美しき舞台演出家。しかし彼女にはアリバイがあり、捜査は進展しないでいた。
そんな中、ある事件の手がかりを知った加賀恭一郎は激しく動揺。それは、孤独死した彼の母に繋がるものだった。

2010年の春にTBS系で放送されたドラマ「新参者」。その後 2本のスペシャルドラマと映画1作を経て、今回がシリーズラストとなる模様。
監督はドラマ「半沢直樹」「陸王」などの演出を務めた福澤克雄。

たいへん個人的な感覚の話ですが。
冒頭に登場する憂いを含んだ伊藤蘭さんの表情。そして 地方のスナックのママとして登場した烏丸せつこさん。ホントにキャスティングがバッチリ過ぎて、見事な“つかみ”でしたわ。

そんなイントロダクションがあって、今回の事件へと展開していくわけですが。
ぶっちゃけ いろんな登場人物がいて。現在と過去と時系列も変わってきて。東京、仙台、滋賀と舞台も飛んだりして。

さらには(初見の人でもわかるような)登場人物らのキャラ付けやユーモアも含ませつつで。
本来なら ずいぶんとゴチャつきそうな流れなのに、意外とよどみなく。なんとか追っていける感じにされていて。
こんな風に仕上げて見せたのは素晴らしい技量だと思いました。

また映像に関しても、ドローンによる空撮の美しさも印象に残ったし、聞き込みの場面の夏らしいギラギラした映像であるとか、親子が崖にいる時の悲壮感漂う荒天であるとか。
そういった点も“抜かりない”なと。説得力ありまくりで超・好感。

あとは やはり役者陣の技量も素晴らしかった。
阿部ちゃんの滑舌の悪さは置いといて。それとなく加賀恭一郎というキャラクターが確立されていたと思います。

そして何より松嶋菜々子さんがいいですね。
ドラマ「砂の塔」でも思いましたが、美しさと狂気と怪しさが見事に表現されていて。観客の眼を引き込んでいく感じありますね。

溝端淳平も 軽妙でありながら不真面目には見えない。ちょうどいい雰囲気を纏っていて。
あとキムラ緑子さんの演じた 強情なババアも「上手いな」と「こんなん いそうだわ」とそう思わせてくれましたし。

あとは小日向文世さんも当然ですが、娘役の桜田ひよりさんには泣かされました。
パッと見、今どきのカワイらしい印象こそ無かったけども、この娘はスゴイわと。率直な感想です。

全体に見どころも多くて、少々内容は複雑ではありますが、それを2時間にまとめ上げたのも見事。
実際 見た感覚としては それ以上のボリュームありましたからね。

もしかすると「テレビの2時間ドラマ」と言われちゃう可能性もあるけれど。
総じて丁寧に作り込まれている印象は受けました。

ただし(とても核心となるトコですが)あんな形で首を絞めて、そんな風になるか?であるとか。
チョイチョイ ツッコミたくなる点もなくはないけれど。まぁそれを差し引いても 十分に及第点でしょう。

バイオレンス度合いを極力なくして、シンプルに誰もが見入ってしまうような、満足度の高いエンターテイメントに仕上がっています。

ちょっといやらしい言い方をするならば、基本はテレビドラマ派生の劇場版というものであって。
その分 ある意味でライトな作品だとは思いますが、変な“あざとさ”もなく、とても上質なドラマとして楽しめる一本ですね。

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あの似顔絵は あの人なのね
posted by 味噌のカツオ at 22:18| Comment(0) | ア行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月23日

勝手にふるえてろ

大九明子
松岡茉優、渡辺大知、北村匠海、石橋杏奈
10年もの間 中学時代の同級生イチを忘れられないでいる24歳のOLヨシカは、ある日突然 職場の同期のニから交際を申し込まれる。
人生初の告白に舞い上がるも、ニとの関係に気乗りしないヨシカは、現在のイチに会おうと思い立ち、同級生の名前を騙って同窓会を計画。ついに憧れの人との再会の日が訪れるが…。

綿矢りさの同名小説を「恋するマドリ」「でーれーガールズ」の大九明子の脚本・監督で映画化。
主演はこれが“初主演”となる松岡茉優。

松岡茉優ってバラエティの司会やっても 頭のキレとか勘の良さとか垣間見えるし。
「ちはやふる」や「桐島、部活やめるってよ」でも その魅力は出てると思うんだけど。
それが“初主演”なんですか。ぶっちゃけ もっと注目されていいと思うんだけどね。

プロデューサーとかキャスティングする人が広瀬すずと土屋太鳳の資料しか見てないんじゃないの?
そう思うぐらい 松岡茉優は好きなんだけど、そんな中にあって さらに今作はベストアクトだと思います。

主人公のヨシカは 絶滅した動物に興味を持ち、10年前の中学の同級生を忘れられず。
ちょっとひねくれて、自己中で、夢見がちな24歳。

そういうキャラを映像化すると得てして オタっぽさ前面に出したビジュアルにしちゃったり。
普段はイケてない黒縁メガネかけてるけど、素顔は「カワイイじゃん」みたいにしがちなんだけど。
そうじゃない。

パッと見 耐えうるビジュアルでファッションも普通に今どきのOLで。ただし靴に油断が表れるけど。
会社の同僚とは楽しい会話もできるけど、家でひとりでいる時は普通に毒も吐くし、日常すれ違う人に対しての観察眼も持っていると。

気をてらったような あざといキャラに仕上げていないし。リアルすぎて映画に出すまでもない個性をちゃんとキャラクターとして確立していると。
これをやったのはホント素晴らしい。

しかもイタいヤツじゃなくて「ウケる〜」って素直に言える側で。同世代の女性だけでなく、男性からも共感する人 メッチャ多そう。

そんな彼女が妄想と現実を境界線無しで、嫌味もなく スイスイ行き来する楽しさよ。
かと思えば 決定的な状況に心やられて ミュージカルチックに陥るシーンも映画らしさにあふれて素晴らしかったです。

原作は主人公よしかの独白みたいな内容らしけど。
この映画版では ちょっと毒吐く感じもあるし、なぜか(歯磨きなど)吐く場面も多かったり。

「タモリ倶楽部」ネタ、オカリナ、赤い付箋、「イチが好き〜」やらも面白かったし。
あとは留守番電話のガイダンス音声が妙に心に響いたり。

ストーリーとしての流れもさることながら、声出して笑えるシーンもいっぱいあって。
ヨシカのキャラクター、松岡茉優の表現力、監督の演出 いずれもがハマったと言っても過言ではないでしょう。

単館系なので「ドッカーン!」と話題にはなっていないけど、休みの日に映画見に行っちゃうような 今どきの20代〜30代の満足度は高いでしょうね。
ツボを突きまくりで、おススメな一本です。

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上司がフレディ過ぎるww
posted by 味噌のカツオ at 01:12| Comment(0) | カ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月22日

青春夜話 Amazing Place

切通理作
深琴、須森隆文、飯島大介、安部智凛
ひょんなことから出会った青井深琴と野島喬。4歳違いで時期は異なるが同じ高校出身とのことで意気投合。
喬は深琴を夜の母校へと誘い出し、誰もない学校でやり残した青春に復讐しようと盛り上がる。

文化批評家として多くの著書も発表している切通理作の初監督作品。

名古屋・シネマスコーレで1週間レイトショーの最終日。
マイクなどもセットされて、どうやら舞台挨拶的なのもあるみたい。

75分の本編終了後、切通監督と深琴が登壇。
素人感丸出しのコメントがあり、今作とは別で深琴主演の短編作品のプロデューサーと監督も登場して、そちらの作品「天使の歯型」も上映されました。
その後も まとまりのない(苦笑)トークがあってという。そんな上映回に足を運んできました。

閑話休題。
「青春夜話 Amazing Place」についてですが。
見た目的にも決してイケてない男女が出会って意気投合。
あらすじ的には「過去への復讐」となっているわけですが…

その衝動はわからなくはないけれど。
だからこそ 学校モノであったり、スク水のモノであったり、いろんなシチュエーションに特化したAVが出回るわけでね。
それを具現化ということなんでしょうが、ツッコミどころがあり過ぎて、ノリきれなかったですね。

大前提としてこの二人は如何ほど経験あるのかしらん。
彼はDTというわけでもないのかな。彼女はいきなり口撃って なかなかの経験者なんですか。
彼の学生服を着ないこだわりの真意は?
といった ところから。

彼女はオフィスに気になる上司がいたみたいだけど、それって あのズル剥けの方なんですか?
そもそもズル剥け好きなら彼ともアリなのはアリかもだけど。

一般的に ズル剥け上司がモテモテキャラってのが「?」だったり。
学校の用務員のおっさんのエピソードも共感するポイント無かったし。

全体にもっとダサいなかにウブなエロがあるとか、逆にアナーキーにもっと行き過ぎるぐらいに行くとか。
もっと妄想力を突き詰められたんじゃないかと。

要は中二病感満載な稚拙な方にいくか、“ロマンポルノ路線”で人間味を出すか。
そういう振り切りがあってよかったんじゃないかと。

あと付け加えるなら、女優をもっとかわいく撮れなかったかな〜とは思いました。
ブサいとは言わないけど、もっと引き出せたんじゃないかな。


という上映がありまして。
さっきスクリーンであんなことやこんなことしてた娘が(舞台挨拶で)目の前にいるのか〜ってのは 少しだけ“ジュン!”ときちゃいました。

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学校でしゃせい大会したよね
posted by 味噌のカツオ at 00:04| Comment(0) | サ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月21日

花筐/HANAGATAMI

大林宣彦
窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、矢作穂香、常盤貴子
1941年の春、佐賀県唐津に暮らす叔母の元に身を寄せることになった17歳の榊山俊彦。様々な学友を得て“勇気を試す冒険”に興じ、肺病を患う従妹の美那に恋心を抱き。
そんな青春を謳歌していた俊彦の日常も、いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆくのだった。

わたくしが子供の頃から映画を作っておられる大林監督ですが、近年の作品も話題にはなっていましたが未見でありました。
今作は“戦争三部作”的にくくられたりしてますが、タイミング合いまして見てきました。

当初は 169分という長尺に尻込みしてるトコもあったんですが…
驚きました。全く退屈することなく、映像に見入ってしまいました。

ストーリーの構成もざっくりした感じだし、舞台も さほど変化は見られません。
でありながら、これだけ引き込んで見せる魅力ってなんなんだろうか?

大林監督 現在80歳。2016年夏に肺がんがステージ4まで進行していたという中、抗がん剤治療を行いながら完成させた作品であると。
思えば 今やアメリカ映画界の巨匠となっているクリント・イーストウッドも 80半ばになりながら、多くの人を引き付ける、心に響く映画を作り続けています。

もちろん体は資本だし 体力的なところも重要ですが、感性とかそういったところがね。
衰えるどころか研ぎ澄まされていってるのは脱帽です。

今作の舞台は佐賀県北部に位置する唐津市。どうやら 戦争がおっぱじまりそうだぞ〜という時代。
現代と違って派手な娯楽もない、ましてや地方都市。そして本当に戦争が始まったら…
そんな中に生きる若者たち。

環境、思想、そして病とも向き合いどう生きていくのか。
物語としては そういったことうえに成り立っているようですが。

前述の通り、それらを提示する映像美。役者たちの芝居。いずれも素晴らしいです。

度々インサートされた血液を模した花びらのカットであるとか。
ありえなかろうと思わせるモノトーンの床。左右が反転する映像。
くすんだ色合いの中の白と紅の美しさ。

そして終始 バックに流れる音楽。
いろんな音・映像に紡がれて、息つく暇もなく見入ってしまいました。

本来の設定は“学生”であるはずの男たちが 大半30代の役者が演じてるんだね。
それ普通の映画でやったらビジュアル的に成立しなさそうだけど、なんだろうか。
当時の学生って、今の青年期ぐらいの成熟度あったのかな〜と思うとちょっと納得。

終盤、ひとり、またひとりと消えていく登場人物たち。
そして最後に残される者、残された思い。

なにが どうかと結論めいたことを述べるなんて野暮なことはさておき。
なにが心に残ったか、何を感じたか。それだけだよね。

ハッキリとした結論を求めたい今どきの日本人には向いていないかもしれませんが。
だから映画として印象に残るんでしょうね。

2017年・キネマ旬報ベストテン日本映画2位に選出された作品。
イチ映画ファンとして、ホントに見て良かったです。

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花筐鶴
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2018年01月08日

ブリムストーン

マルティン・コールホーヴェン
ガイ・ピアース、ダコタ・ファニング、エミリア・ジョーンズ
夫と2人の子供と暮らすリズ。ある事情で言葉を発することはできないが、村では助産師として頼られている。
そんな彼女の前に揺るぎない信仰心を持った牧師が現れる。「汝の罪を罰しなければならない」そう告げられたリズの脳裏に壮絶な過去の記憶がよみがえる。

予告で見たその映像。シチュエーションとしては西部劇か? しかし何やら不穏な雰囲気に漂う狂気。
「何だか気になるぞ」とチェックしてみましたが。

驚くべきことに東京・大阪・名古屋の計3館での上映。どんだけ小規模公開やねん!?
上映時間は約2時間半。いくらか長尺ではありましたが、時間を調整して見てきました。

言葉を発せず手話でコミュニケーションをとる主人公リズ。そして幼いその娘。
年の離れた夫。「母親じゃない」としてリズに心を開かない夫の連れ子。

そんな彼女の前に現れる牧師。
言葉を発せずとも その表情、立ち振る舞いで 伝わる緊張感。

普通の作品であれば この牧師が怪しいのか、良い人なのかで多少引っ張りそうだけど、今作は即行でリズの前に立ちはだかります。
そういう粘りを入れずとも、この二人の関係性がどういったものなのかでしっかり物語を形成していきます。
そして一気に訪れる衝撃の展開。

彼女たちの関係は?というところで その過去を描いた第2章、第3章へ。
そして第1章の続きとなる第4章へという構成。

教会が出てきたり牧師さんが出てきたり。
罪と罰も関わってくるのでキリスト教的なテーマ性があるのかと思いきやそうでもなさそうな。

率直に言えるのは、とんでもない変態性。
そして映画として 見るに堪えない、目を背けたくなるようなシーンがチョイチョイ入っております。
人としてやってはいけない行為。実に痛々しい描写。それに動物たちの…

そんな2時間半の映画ですが、良くも悪くも緊張感が支配しているし、成長したダコタの美しさもあって 思いのほか集中して見いってしまったわけですが。

タイトルの「ブリムストーン BRIMSTONE」は旧約聖書の『創世記』などに登場する「焦熱地獄」の意味があるとか。
それも踏まえての『恐ろしいのは地獄の業火か? 違う 愛がないことだ』なんてセリフにつながるんだろうけど。あの決着の付け方には思わず「むぅ」と思ってしまいましたし。
さらには彼女が最後に取った行動の意味合いもイマイチ飲み込みにくかったかな。

いずれにせよ、見ていてイヤな気分を味わうことには間違いないので。なかなか多くの人には進めにくい。
そのくせ 見入ってしまうような映像の力は間違いなくあります。

決して面白くないわけじゃないが、向き合い方の難しい作品ではあるよね。

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荒野の結婚相談所
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2018年01月07日

ビジランテ

入江 悠
大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子
閉鎖的な地方都市。幼い頃に失踪した長男・一郎。地元の市議会議員として身を尽くす次男・二郎。デリヘルの雇われ店長の三男・三郎。
それぞれの道を歩んできた三兄弟だったが、父親の死をきっかけに一郎が30年ぶりに戻って来る。やがて、再会した三兄弟の運命は再び交錯していく。

タイトルの「ビジランテ」はゴジラと一戦交えたモンスターのことではありませんで。
普通に訳すなら「自警団員」のことだそうで。と同時に、いわゆるアメコミの中では「悪者に裁きを下すもの」を意味するとも。
なるほど。確かに どちらも今作には…ね。

入江悠監督の作品で近年見たのは「SR サイタマノラッパー」「太陽」「22年目の告白 -私が殺人犯です-」。
いずれも とある世界を映し出したり、何がしかの閉塞感が感じられたり。そんな印象なんですが。

今作も「SR サイタマノラッパー」同様、原作なしのオリジナルなのかな。
地方都市の空気感。(季節も含めてですが)映像から伝わる寂しさや温度の冷たさも似てますね。

暴君然とした父親と 若い、幼い、三兄弟。
その父の振る舞いに背を向けて飛び出した長男。

その後 残された次男と三男がどのように生き抜いてきたのかは示されませんが、今現在の次男は父親と同じく政治の道を歩み、妻と息子と共に社会との関わりをもって生きている…ように見えます。
そして三男は親の元を離れ、ちょっと危険な立ち位置で、デリヘルの雇われ店長となっている。

地方とはいえ広大な土地を残し、親父は死去。
「あの親父の残したものなんて 何にもいらねえ」とのスタンスの三男。一方、様々なしがらみで土地を“有効に”使いたい次男。

そこまでは良かったが、突如 行方不明となっていた長男が帰ってくると。しかも土地の権利を相続するという書類を持って。

そういった目に見える事実関係の下で展開される物語。ただし、父と長男の間で何があったのか。篠田麻里子演じる次男の妻の本性は?
など描かれない部分も多く。それは別にいいんだけど。

自分たちの思いはよそに、大きく横たわるしがらみや いろんな外的要因に翻弄されていく三兄弟。
悲劇なのか、真相はどうなのか。それらがどうでもよくなるぐらい巻き込まれていく感じがなんとも。

冷たい川に流されるとまでは言わないけど、抗えないままに生きていくしかない印象。
「サイタマノ〜」でも似たような雰囲気は感じたけど。あちらはまだ取り返しがききそうな、まだいろんな方向に舵を切れそうな若者だったけど、今作は もういい大人で社会人だからね。
そういう意味も含めて(これだけ巻き込まれると)やり直せない気がしちゃうんだよね。救いが無いともいえるのかな。

それに「サイタマノ〜」ではラストに“吐き出す”描写があったけど、今作はそういうカタルシスも得られなくって。
テーマ性とかイメージが近いようで、後味は・・・

わたくし的に後味が悪いならそれもまた〜と思えるけど。そうじゃなくて あまりにも無な感じがして。
決して 見るんじゃなかったとまでは言わないけれど、虚無感しか残らないというべきか。

これはこれで多少の賛否があったりするようだけど、それもわかりますね。

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一郎、二郎、三郎 はわかりやすい役名
posted by 味噌のカツオ at 00:15| Comment(0) | ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする