2016年10月31日

PK

ラージクマール・ヒラニ
アーミル・カーン、アヌーシュカ・シャルマ、スシャント・シン・ラージプート
留学先で大失恋し、今は母国インドのTV報道局で働くジャグー。ある日 地下鉄で黄色いヘルメットを被り神様の絵に“行方不明”と書かれたチラシを配る男と遭遇。
テレビのネタになると思い男に取材を試みると、彼は途方もない いきさつを語りはじめるのだった。

「きっと、うまくいく」の監督と主演が再タッグ。となれば、この作品も“きっと うまくいく”のではないかと。
そんな期待を込めての鑑賞。

事前情報でわかっていたのは、謎の男がインドで神様を探す…という一点。さすがにそれだけでは内容が全く読めないんだけど。
しかし 冒頭からとんでもないものが飛んできてビックリ!

これ最初のシーンでわかるのでネタバレ感に乏しいので書きますが、主人公は宇宙人なんですね。
それもあって地球上のアレコレに変な解釈をしたり。神様や宗教観が全く理解できていなかったり。おまけに あのギョロ目に大きな耳も合点がいくかな。
そのトンチンカンな振る舞いから「PK(酔っぱらい)」と呼ばれるようになります。

すると今度は いきなり舞台はベルギーへ。
テレビ制作に携わるのが夢というジャグーのパート。
彼女と恋人の存在。父親との関係。この辺りが描かれます。

それからインドに戻ったジャグーがひょんなことから PKと出会い、彼の主張に共鳴。それを訴えていくわけですが…

その主張というのは、神とは何か、宗教とは…信仰とは…
そもそも人口も多く、近隣諸国との関係から その辺りの問題はデリケートな部分もあるとは思いますが。
我々日本人はクリスマスで騒ぎ、正月には初詣に参り、近所の仏様にも手を合わせる。そもそもがフランクな(?)信仰スタイル。

なのでこの映画のタブー感や不可思議な事情は肌感覚で理解はできないのかもだけど。
でも もちろん言いたいことはわかります。そこはさすがに。

そのうえで言うならば、やはりこのストーリー展開で2時間半は長かったかな。全般的に冗長な印象はぬぐえなかった。
んで コメディの線にしても、そんなにバカバカしく笑える感じも少なかったか。

もしかしたら PK=宇宙人 というのをもっと隠しておくとか、留置所での回想シーンで観客に明かしても良かったんじゃないかな。

全体を通して、グッと感情移入できる感じでもなかったし。
終盤のネコと手紙のエピソードも「うまい」とは思ったけど、それほど泣けはしなかったしね。

前作の「きっと、うまくいく」からの流れで期待をしちゃってましたが、う〜ん やっぱそんなにうまくはいかないか!?
わたくし的にはいくらか長く感じた2時間半でした。

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インドでは そんなに車も踊ってるの?
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2016年10月16日

永い言い訳

西川美和
本木雅弘、深津絵里、堀内敬子、竹原ピストル
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻がバス事故により亡くなったと知らせを受ける。が その時、不倫相手と密会していた幸夫は悲しむことができずにいた。
そんなある日、幸夫は 同じ事故で妻を亡くした大宮陽一に会い、ふとした思いつきから彼の子どもたちの世話を買って出る。

西川美和監督の作品って いずれも明確な着地点は明示されないんですね。
サラリと見ると、いくらかモヤモヤ感が残るのは否定しません。

でも丸わかり過ぎないトコロ、観客の心に委ねるトコロが、映画ファンから支持される点でもあるんだけど。

その手の映画ってヒリヒリきたりダークだったりものですが、いい感じの微笑ましさを配するのも西川監督は上手いですよね。
あと あまり同一の役者を起用しないのも、その都度 登場人物のキャラクターに多様性を持たせてる感じがして面白いです。
この「永い言い訳」も まさにその西川監督の“らしさ”が活かされております。

キャスティングについては、当て書きというのがありまして。ある役者さんをイメージして脚本を書くという手法なのですが。
西川監督の場合、自身の書いた原作のイメージに、より合った人をキャスティングするのが上手いんでしょうね。

この作品の本木雅弘もそうですし、竹原ピストルさんも超ハマり役。
ちょっとコワモテだけど、真っ直ぐでピュアでいくらか不器用なトラック乗り。素晴らしい(笑)

そして子どもたちの演技も良かったです。
ただしこの場合、西川監督の師匠筋の是枝監督の手法。設定だけ決めて 子どもたちには自由にさせてしまう感じの撮り方やってるみたいですね。
それなら こうなるわな〜という思いと、それで あの誕生日の鍋のシーンを撮ったのはスゴイなとも。

さて、物語の展開や登場人物の心の動き、大方はわかるんだけど。いろんな感想をチェックしても、核心的な部分について コレってのがなくて。様々な受け止め方があるのかな。

妻・夏子が あんなメールを残していた訳。またあれが本心なのか。
幸夫の妻への想いは。そしてあのメールを見て何を感じたのか。
幸夫は何に涙し、なぜあの本を記し、これからどこへ向かうのか。

それから もうひとつ気になったのが、それぞれの髪の毛の長さと、随所にある髪を切るシーンに関して。

夏子が幸夫の髪を切る場面から始まり、終盤では それまで他者には触らせなかった髪を、妻の元同僚にカットしてもらっています。
陽一の息子・真平も季節と共に 髪は伸びていくのですが。最後 中学生となった段階で 驚くほど短くなって。
娘の灯(あかり)は 自分で前髪を揃えようとしていました。父・陽一はずっと坊主だったけど(多少の伸びはあり)。

女性が髪を切ると「失恋した?」「ただの気分転換?」いろいろな意味合いを探られちゃったりするんだけど。
この映画でのそれも、人としての成長や成熟とか。何か意味があるのかな。
結局 答えは見つからないんだけどさ(苦笑)

監督の過去作と同じく、明確な心理表現や明らかな未来は提示されません。
結局 わからないことだらけなんだけどさ(苦笑)

でも アイツだってコイツだって、なんなら自分自身だって。実際の日常の中でも丸わかりの心なんて そんなにないわけで。
露骨な お涙頂戴映画がどこかしっくりこないように、明確すぎないから、より多くの観客に沁みていくのかもしれないね。

今後も西川監督の作品に期待します。
また3年後ぐらいかな?

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♪ ちゃぷちゃぷローリー
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2016年10月13日

お父さんと伊藤さん

タナダユキ
上野樹里、リリー・フランキー、長谷川朝晴、藤 竜也
書店でアルバイトをしている34歳の彩は、給食センターでアルバイトをする20歳上のバツイチ男・伊藤さんと同棲中。
そこへ息子の家を追い出された彩のお父さんが、突然転がり込んでくる。その日から、彩(34)と伊藤さん(54)とお父さん(74)との、奇妙な共同生活がはじまっていった。

タナダユキ監督の作品、わたくし初めてやな。
いろいろな映画を見てますが、邦画ってどうしても原作モノが多くなるね。小説やらコミックやら。やっぱり オリジナルの企画って難しいんだろうけど。
というわけで 今作は第8回小説現代長編新人賞を受賞した中澤日菜子の小説がベース。

当然ながら このタイトルに「ハッ」とさせられ。この3人のキャスティングに惹かれ。
34歳の女に54歳の彼氏。そして74歳の父親が絡むという設定に困惑&ワクワク。

20もの歳の差カップル。しかも二人とも仕事はアルバイト。それはどうかと思いつつ。
しかし ムダにベタベタすることもなく。小さな悩みに対し 大らかに包み込むようなアドバイスを送るオジサンの図。

今どきの女性の“年上男性幻想”を見事に具現化。
こういうライフスタイルを 理想と言ってしまう人も少なからずいるんじゃないかな。

そこへ入ってくる、絵にかいたような堅物で柔軟性の無い親父。
兄嫁じゃないけど、こんなのと同居は無理だよね。伊藤さんもホンネではしんどいんだろうなと。
しかし、ホームセンターで意気投合してしまう場面に、とてつもない説得力。
いやぁ、男って 工具とか見ると変に気になっちゃうんよね(笑)

全体のストーリー展開で言うなら 居場所を無くした親父の処遇という。ただそれだけなんだけど。
その中に配された 個性あふれた人々のキャッチボールや、中規模エピソードの数珠つなぎが程よいスパイスとなり、飽きさせない物語となっています。

上野樹里って 頑張らないキャラクターやらせたらピカイチですな。
声質やちょっとルーズな話し方もあるんだろうけど、頭で手を組んで寝っ転がる姿が一番似合う女優じゃないですか(笑)
尾行シーンもそうですが、あの ちょいユル加減がじつに魅力的なんだよね。

藤竜也演じるのが 他人の言うこと聞かず、ただうるさいお父さん。
でも元教師という設定なら、このビジュアルはアリかな。
ただ 痴呆気味?とか万引き常習犯?とか。段ボール箱のエピソードは必要ないような。少なくとも キャラ的にもストーリー的にも活かされていないような。

それから やっぱりなんだけど。伊藤さん役のリリーさんがまた素晴らしい。
まだ人生経験の浅い彩をリードし、融通の利かない高齢者のお父さんのプライドを傷つけないように導くと。あのポジションは絶妙だわ。
だからといって 全ての54歳男性があんな振る舞いできるかっちゅうと、そんなことないわけで。

趣味は家庭菜園。どこか達観したかのような、それでいてアルバイト。
伊藤さんは理想の男性像…といってはい言い過ぎかな!?

でも役としたら、リリーさんじゃないとハマらないキャラクターだよね。

さてさて。この作品を見た中で、どうしても見過ごせない点がいくつかあるんだけど。
そもそも上野樹里が34歳に見えなくって。ちなみに今の実年齢は30歳で。
そこは絵作り、感覚として ちょっとだけ厳しいかな。

序盤、彩とお兄さんがイチゴパフェを食べるシーン。設定は8月から9月のはずなのだが。
ズバリ、8月にあんな美味しそうなイチゴは出回っていないよね。
じゃあ なぜわざわざイチゴパフェ?とは思ったけど。

その後に蝉の声や 秋の虫の声や風の音。そういう季節感をしっかり作りだしてた分、最初のイチゴパフェはリアリティが薄いよね。

そして お父さんがトラブルに巻き込まれ手を負傷。
おそらく右手が使えず左手で書いたであろう、ミミズの這ったような書置きを残し、家を出てしまいます。
やっと発見された際には右手の包帯は無かったので「治った?」と思ってたんだけど。

次のシーンでは また包帯を巻いていて。おいおいおい…そのつながりはアカンでしょ。
なんなら 新たに火傷かなんかしたのかな?

とまぁ重箱の隅みたいなツッコミさせていただきましたが。
とにかく登場人物が、役者が良かった分、所々で詰めの甘さを感じてしまいました。
なんか、なんか 惜しい感じやったね。

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白い犬の娘が彩
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2016年10月12日

淵に立つ

深田晃司
浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、太賀
小さな金属加工工場を営む鈴岡家に 夫・利雄の旧友・八坂が現れる。利雄は彼を雇い入れ、自宅の空室を提供。誠実で礼儀正しい八坂の姿に、妻の章江も、娘の蛍も彼に好意を抱いていく。
しかし八坂は 家族に残酷な爪痕を残し、姿を消してしまう。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作。
こう言ってはなんですが。決してメジャーな監督でもないし、有名どころも浅野忠信しか出ていないし(しかも前半でアウェイ)。
しかしながら映画としての見応えは超・ヘヴィー。

もちろんクオリティの高さと後味の良さは必ずしもイコールではないのですが。

夫、妻、娘。ある意味 平凡な家庭に、素性のしれない男がやって来ます。
そうは言っても 我々観客的には“絶対に怪しい”感を受け止めながらでありまして。
変な話、家族に浸透していくくだりは 眠気すら漂ってきちゃったんだけど。

そして中盤。案の定 その奥に隠された、もうひとつの顔をあらわにしていきます。
“やっぱりか”というところでもあったんだけど。

しかし その男の残した傷というのが、いくらか想像以上の酷さを伴っていて。
やぁ、見ていて、ひたすら辛かった。

夫は男を探し出して、せめて真相を聞き出したいと願い。妻は 過去は忘れて前に進みたいと願い。
そんなところに、男の“手がかり”が示されたことで…

この手の作品って、どこかに救いなのか希望なのかあるものだけど。この映画には それが無いのかな。
しかも、元々あった幸せを壊すではなく、元々絆があったのかすら怪しく見えて。

初めから危うかった家族というコミュニテイ(厳密には夫婦関係か)を、さらにズタズタにしてみせるような。
なんなら よくもまぁこんな残酷な物語を書けるよなと。そこまで思っちゃうね。
ちなみに原作は深田晃司監督自身の小説ということですが。

役者陣は全員素晴らしかった。
あの飄々とした雰囲気と怖さの中間をキープした存在感は浅野忠信にしか出せないかも。
古館寛治さんは サブのポジションが多いし、メガネとヒゲに隠されたぼんやりしたキャラが大半なんだけど。今作では 見事に話の軸となっておられて。

そして筒井真理子さんの前半に見せる色気を残した母親としての顔。そして後半は娘を思うがあまり心身ともに変わり果てた姿を披露されてて。
なんでも8年後の撮影に入る3週間のインターバルの間に13kg体重を増やしたそうで。
あの変わりようは強烈な説得力を保ってみせましたね。

ストーリーの鍵となる難しい役どころだった太賀くんも良かったですね。
イケメンでないと見向きされない世の流れはありましょうが。彼のような一見 普通の若者で。しかも芝居の上手いのは今後注目ですよ。

まぁ演技が上手いとは言いましたが。正しくは振る舞いやセリフが不自然じゃないという感じで。
太賀くんも古館寛治さんも ふとした瞬間に上手さを感じさせるんよね。

前半と後半の8年の間に、この家族に何が起きてどんな変化があって。
その描かれていない部分が伝わるから、見ていてより辛くなってしまいます。
でも やっぱり、初めからつながりは薄かったように思うけどなぁ。

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早食いは刑務所の名残り
posted by 味噌のカツオ at 01:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月11日

少女

三島有紀子
本田 翼、山本美月、真剣佑、稲垣吾郎
それぞれが闇を抱える高校2年生の由紀と敦子。転校生の紫織から「親友の死体を見たことがある」と聞き、ふたりは人が死ぬ瞬間を見たいと思うようになる。
やがて夏休みになり、由紀は小児科病棟で、敦子は老人ホームでボランティアを始めるが…

原作は湊かなえの小説。これまでにも「告白」や「白ゆき姫殺人事件」が映画化されております。
それらは それなりに話題にもなってましたが。今作は巷の評判がイマイチみたいですね。実際わたくしが見に行ったとき、他に1人しか客おらんかったし。

ぶっちゃけさ、みんな わざわざ金払って暗〜い映画を見たくないんだと思うよ。
作品の良し悪しはさておき、暗いの見たくないんでしょ。

そう言いきれるぐらい、チラシから予告編から辛気臭さが漂ってて。
本田翼が山本美月をジワジワいたぶって殺す映画なんか…ねぇ。

というとこですが。
実際には そんな感じの映画でもあったり、なかったり。
少なくとも あんな笑顔が見られるとは…と思ったわけで。

んで逆に「人が死ぬところが見たい」と思って見に来た人には、ちょっと違和感あるかも。
こういう書き方すると なんだか誰にも見向きされなさそうな作品だよね。

でも、でも、考えようによっては「聲の形」にも通じるようなテーマ性もあって。わたくし的には そんなに悪くはなかったです。

事前のイメージとは違って 友情だとか、前に進もうという思いだとか。
終盤、全部の登場人物の関係性がつながっていく展開は、映画的にも(なんとなく)面白かったし。

そして男性目線で言えば、本田翼が山本美月をじっくり見られること。
二人が手をつないで駆けていくスロー映像は…よかったです。

冒頭に、舞台・お芝居のワンシーンのようなものが出てきます。
その時点で、これはお芝居の延長なんだなと思えばすんなりと入っていけるでしょう。

そもそも三島有紀子監督は、かつて「しあわせのパン」で沁みる作品を作ってて。
ところが 続く「ぶどうのなみだ」はリズム感の悪いファンタジーで全く受け入れられず。

それを思えば今作は、その中間かなぁ。
なんというか、我々が生きている社会とはちょっと違う日常ベースで描かれてるので、真正面から受け止めようとするといくらかしんどいね。

本田翼演じる由紀がどんなキャラなのかは、一貫性が無く見えて、少々つらいな。
闇の中から半開きの眼差しで全てを見てるのかと思いきや、普通に可愛らしい笑顔もみせるし。
そもそも現在24歳の本田翼と 25歳の山本美月が女子高生役なんだから。
全部受け入れられる人じゃないと楽しめない映画かな。

最後に、稲垣吾郎がいい雰囲気もってて。
自身も映画好きというのは聞きますが。映画俳優としての吾郎ちゃん。今後も期待したいですね。

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まさかのタッチー&昴
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2016年10月07日

Every Day

手塚 悟
永野宗典、山本真由美、倉田大輔、こいけけいこ
ある朝。晴之の目の前に、交通事故で昏睡状態にあったはずの恋人・咲が現れる。「時間を1週間もらった」と話す咲は、いつものように弁当を晴之に渡す。
当たり前だった2人の日常が、特別なものとなって始まる。

あらすじを読んで 面白そうだったので見てきました。
それこそ事前に設定を理解していないと、冒頭のやり取りは意味不明になりそうだけど。

スクリーンを見て「あっ」と思ったのが主演の永野宗典。
「サマータイムマシン・ブルース」に出てたなぁ。確かにチラシにもヨーロッパ企画に在籍し〜って書いてあったね。

この作品を見ていて何気に感じたのがキャストの自然さ。
咲のお父さん。会社の同僚たち。みんな クサさのかけらもなく。めちゃナチュラル。
特に咲さんの振る舞い。やさしさが滲み出ていて、どんどん愛おしくなっていきましたわ。

ただ、その中にあって、主演の永野宗典が気になっちゃった。
うまい。うまいんだけど、どうしても舞台役者っぽさが出てるような。
あるいは ひとつひとつのリアクションやセリフが ちょっとづつ面白く見える。

やぁ、実際にそういうノリのサラリーマンの方もおるかもですが、この役柄、シチュエーションのなかにあっては、もうちょっとだけ抑え気味でも良かったんじゃないかな。

あとはオフィス内での弁当のやり取りだとか、離婚式のくだりなんかが いくらか雑に思えてしまったこと。
そしてチョイチョイ登場するお弁当が どれも同じように見えたり、あまりおいしそうでないというのはマイナスかな。わたくし目線で言うと。

そういうトコロに手を抜かないからこそ、説得力が増すと思うんだな。

一方で、BGMに使われているピアノがキレイでしたね。
音楽を担当した haruka nakamura さんの曲を手塚監督が聴いたことが、今作の始まりだったとのことで。これは間違いなく 映画支えた音楽でありましょう。

それから白いページをめくっていく演出も 効果的に配されていましたね。そこにあった写真もキレイで印象に残ります。

そして本編の終盤のやりとり。
大前提、僕らは悲しい方向性を感じながら、あの二人の会話を聞いていると。
正直 もしかして…との期待をほんのちょっとだけ感じながら。

そんな切ないストーリーでした。
でもでも、あえて厳しく言うならば、なんか惜しいかな。
もうちょっと深められたんじゃないかなと。
求め過ぎかな!?

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離婚式のブーケの意味合いって?
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2016年10月05日

A2 完全版

森 達也
オウム真理教(現アーレフ)の信者たちにカメラを向け、オウム事件の本質に迫った「A」(1998年)。その続編として公開された「A2」(2001年)。
それから15年の時を経て、当時カットされた映像を加え“完全版”としての再上映。

2016年公開、森達也監督の新作「FAKE」公開に合わせての“完全版”上映。
追加されたのは、麻原の実の娘が登場する約5分ほどのシーン。当時は未成年であり、諸々の影響を考慮してカットされたとのこと。

わたくし「FAKE」は見ましたが、この「A」及び「A2」は見ておりませんで。
企画としてオウム真理教に関するドキュメンタリーというのは知ってましたが。。。

事前に「FAKE」を見てたので「あぁそういうことか」とすぐに理解できましたが。
ただ単に「憎きオウム真理教の全容とは?」というスタンスで見てたら、余計に「???」だったかもですね。

そうであろうとなかろうと、見る人によっては「オウム擁護の映画だ」としか思わんだろうけども。

映像に記録されているのはオウム信者の日常。ただし映し出されているのは、テレビで 報道で知るそれとは違う、等身大のその姿。
そして まるで魔女狩りかのごとく、プラカードを掲げる人々の姿。

オウム真理教は教祖の意向で、次々と危険な行動に走りました。
まさに狂信的であるからこそ、行いの善悪の判断がつかない…いや、教義の下であっては善なのだろうけど。

でも今(撮影は2000年か)そこにいるのは、ただ純粋に修行を行う若者たちであって。
それに対し「オウムは出ていけ」と唱える人々。

「じゃあ話し合いましょう」と向かい入れても「そんなことはどうでもいいんだ」とグダグダな人々。

かと思えば 知らず知らずのうちに打ち解け合う姿も。
「オウムは認めないが、あんたたちは好きだから」と。
その交流を目の当たりにしつつ、報道はしないメディア。

大学で同じサークルだった信者と新聞記者。
自分はなぜここで修行しているのか迷いを見せる信者。一部の事実を見ぬふりして報道を続けることに向き合う記者。

松本サリン事件の被害者でもある河野さんとオウムの対話の場面。報道記者を前にしながら、オウムが社会性を保っていくにはどうするべきか。河野さんがそれを信者に指南しているように見受けられました。

いろいろと印象に残る映像の数々。時に微笑ましく、時に考えさせられ。
そんなドキュメンタリー作品でありました。

これはオウムに関わらずで。
どこぞの国の政策がイカれていても、末端の人民には如何ともしがたいこともあるように。

だから教祖が犯罪を指示していたとしても、ただ修行をしている若者に罪はないとも思うんだ。思うんだが。
国籍は選べないが、宗教は選んで信じたものなんだよね。

なぜ そのような危険思想があった教団に傾倒するのか。
そこはやっぱり首をかしげてしまうのですが。
それはそれとして疑問ではあります。

と同時に、都合のいい事実だけを発表する警察。
意にそぐわない事実は報じないマスコミ。
理解も思考も止まった住民。

それはそれで危険なことだと。認識はしております。

最後に。このフィルムに残されたことだけがリアルであると受け止めるわたくしは…
森達也教に洗脳されてるのかもね(笑)
posted by 味噌のカツオ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月04日

コロニア

フロリアン・ガレンベルガー
エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール、ミカエル・ニュークヴィスト
フライトでチリを訪れたドイツのキャビンアテンダント・レナは、ジャーナリストで恋人のダニエルと再会を果たす。しかし突然のクーデターにより ダニエルが軍部に連行されてしまう。
レナはダニエルを救うため、慈善団体施設“コロニア・ディグニダ”に潜入する。

昨今では「実話を元にした…」なんて宣伝文句をよく見かけますが、この作品もそのようで。

ことが起こったのは1973年9月11日。
現地の情勢を取材するべく潜入していたダニエル。CAとしてチリを訪れ、恋人のダニエルとの逢瀬を楽しんでいたレナ。
しかしクーデターによりダニエルが連行され、彼を救うためにレナはコロニア・ディグニダへ潜入していきます。。。

という話らしいのですが、作中ではダニエルはジャーナリストという感じではなく、イチ活動家に見えまして。
なので、導入部を見ていて若干「?」と感じてしまいました。

場面 場面でダニエルがカメラに固執する描写があったので、今にして思えば ジャーナリストという設定は生きていたんだなと。

そしてもう一点。
コロニア・ディグニダという施設。実は 性的虐待の罪でドイツを追われ、チリで“教皇”として根を張ったナチスの残党の男が設立したものであると。
その設定を理解していいまま鑑賞したので、主人公が 信念のままにそこに潜入し、その実態を目の当たりにしていく展開を、わたくし自身も共有した感じになっていまして。

なので…コワかったですねぇ。不気味でしたねぇ。

端的に言ってしまえば“カルト”であり、だからこその洗脳であり、集団としてのコワさが際立っています。が…
それ以前に さらなる展開が待っていまして。

この二重構造が作品の気味の悪さを際立たせておりましたね。

監督のフロリアン・ガレンベルガーは、2000年に第73回アカデミーで短編映画賞を受賞しているとか。
であっても今作の劇場公開の規模は大きくはなくて。
ですが 見応えのある作品であるのは確かです。

そして あらためて。
実話ベースという点に向き合うと、もう一度コワさを感じちゃうよなぁ。

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機長の長髪と本編の関係は!?
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2016年10月03日

SCOOP!

大根 仁
福山雅治、二階堂ふみ、吉田 羊、滝藤賢一
伝説的スクープ写真を撮ってきたカメラマンの都城静。今では借金に追われつつ、芸能スキャンダル専門のパパラッチとなっていた。そんな彼が、写真週刊誌「SCOOP!」に配属された新人記者・行川野火とタッグを組むことに。
この仕事に疑問を持っていた野火だったが、次々とスクープを連発するうち その魅力に取り込まれていく。

大根仁監督が福山雅治と初タッグで描くは、芸能パパラッチが主人公という。そもそもスキャンダラスなテーマなので、エンタメとして面白くなりそうだけど、下手すると奇をてらっただけになる可能性も。
ところがところが。そんな心配は杞憂に終わります。
率直に、こんなに泣けるとは思わなんだ(笑)

その福山演じる都城静という男。借金を抱え、笑顔を忘れ、下ネタまみれで自堕落なカメラマン。しかも他人のスキャンダルが食いブチという。
が、意外にも このキャラクターが福山雅治にどハマリで。

近年は“陰”な役が多いですし、カメラが趣味であり 下ネタ好きであり。
それらの情報が見る側としてリンクしてる一方、芸能スクープの対象になったことが無いので、役に対しての“あてつけ”感がないのもまた良し。
そういうところが人間味として魅力があって、ビジュアルの良さが主役感を放っていて。

そんな芸能スクープのあり方について、一部ではゲスいイメージもあるけれど。それが話題として日常の中で存在しているのも事実。
突然 現場に付き合わされた野火が「サイテーな仕事」というのもわかります。

でも大きな獲物を捕らえたならば「この仕事サイコー!」と言ってしまう感覚。
その両方持ち合わせているのが この仕事なんでしょう。

さてさて、以下だんだんネタバレ無しでは書けなくなってしまいますが。
終盤、芸能スキャンダルだけではなく、昔のように社会・事件のスクープを撮ってほしいとなっていきまして。
静がカメラマンを目指すきっかけとなった ロバート・キャパの報道写真が引用されます。

そんな折に飛び込んできた リリー・フランキー演じるチャラ源さんの事件。
そして衝撃的な展開へと向かっていきます。

この辺りまでの雰囲気は、ずいぶんと昔に見たドラマ「探偵物語」や「プロハンター」などに感じたコメディ&シリアスを彷彿とさせ。
あの場面については「太陽にほえろ」シリーズの殉職シーンに覚えた哀愁と色気が垣間見えました。

その瞬間を野火が捉えた写真が また印象的で。見ようによっては、先のキャパの兵士の写真にも重なるものがあって。
あの写真が微妙だと その後の説得力が無くなってくるものなので。そういう意味で素晴らしかったと思います。

それに続く、その写真の扱いについての編集部での場面。そして涙ながらに語る馬場ちゃんこと滝藤賢一がたまらない。

もうホント、こんなに泣かされるとは思わなんだというのがこの辺りでして。
確かに ちょっとやり過ぎな描写もあったり、いくらなんでも現実には…と言いたくなる部分もあります。
でも そこは映画ですからと乗り越えさせてもらってね。

下世話であり、思わず笑えたり。静と野火のバディムービーであり。
気がつけば社会派なメッセージも突き付けられたりもして。
それらのテイストを上手く配しているので、映画としての満足度がとても高くなっています。

あとどうしても書いておかなくてはいけないのが、リリーさんの怪演っぷり。あれは怖い。
もちろん、当然、実生活であんな人と接したことは無いけれど、ああいう人はそうなんだろうなと思わせる絶妙な具合が、より恐ろしさを突き付けてきます。
もっと言うなら、よくもあんな“芝居”ができるなと(苦笑)

そして 吉田羊さん演じる定子も芯のある女性編集者然としていて。
映画には描かれていない静との過去もにおわせる雰囲気は上手いと思いました。

映画って役者が演じたものをカメラに収めて、編集して音楽つけていって作っていくわけだけども。
何を写して どう仕上げていくか。結局のところは監督のセンスだと思うんですよ。

であるとするならば、観客を一時も退屈させないような大根監督の作風はやっぱりスゴいよね。

余談ですがね。ホントに見応えのある作品だったので、「探偵はBARにいる」みたいに続編ができたりしないかな。
でも静があぁなっては無理か。。。

でも その前日譚として、静と定子の関係や、チャラ源さんと間に交わされた物語を掘り下げるのはありなのかな。
やっぱスケジュール的に無理か!?

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ましゃ=キューピー
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2016年10月01日

オーバー・フェンス

オーバー・フェンス
山下敦弘
オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、優香
家庭を顧みず妻に愛想をつかされた白岩は、東京から函館に戻り、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた。白岩は訓練校の同期の代島に連れていかれたキャバクラで、風変りなホステス聡(さとし)と出会う。
どこか危うい彼女に白岩は急速に惹かれていくのだが…

佐藤泰志の小説を原作とした“函館三部作”と称される三つの作品。熊切和嘉監督の「海炭市叙景」、呉美保監督の「そこのみにて光輝く」、それに続くのが今作でありまして。
原作は1985年に発表されたもので、佐藤泰志自身、東京から故郷の函館に戻り 職業訓練校に通っていたとのこと。
ノンフィクションとは言わないまでも、自身をモデルとしたうえでの創作なのかもです。

その三部作とされるものを、アラフォー世代の実力派の3人の監督が映画化してるのも面白いですな。

こう言ってしまうとなんですが。
ラストまでいってもズバーンとくる感じには乏しいし、あくまで長い長い人生の中の、とあるワンシーンと思えなくもない。
でも、でもでも、いろんなことを考えさせられる、いろんなことを感じられる2時間弱であるのは間違いない。

あまり事前情報を入れずに鑑賞したんだけど。
冒頭、タバコを吸いながら“微妙な距離感を漂わせつつ”世間話をしてるシーンから なんかムズムズ。
どこかゆるい空気感のまま、グイグイとは言わないまでも、自然と作品の世界観に馴染んでいきました。

でも もちろんそのままで終わるはずもなく。

オダギリジョー演じる白岩にも、蒼井優の演じる聡にも、それぞれの物語があって。
それらが全面晒されるわけではないところが、なんかリアリティありましたね。

ダチョウの求愛を真似て見せる聡は、ズバリそのもの、愛を求めているんだろうけれど。
かといって愛を与えると噛みついてみせるという。

いや もしかしたら、それが(その場では)本当の愛ではないことを理解してるからこそなのだろうが。

でも正直 映画を見ながら考えたですよ。
「すぐヤレる女」と聞いても、メンヘラ?な一面が見えたなら…いくかなぁ、いかんかなぁ。

んで白岩はいくんかぁ〜と思ってみてたんだけど。
結局彼も温和な表情を見せてはおりながら、じつは 突然キレてしまう一面があったり。大切な人を悲しませた…ような過去があって。

心の病とまでは言わないけれど、そういった迷いや弱さを受け入れられる人、理解できる人じゃないと、この作品を楽しめないかな。

オダジョーさんが何とも言えない雰囲気をまとっている姿が何ともたまらない。
そして蒼井優の壊れっぷりと愛らしさは、女としてはキツいけど、女優としては素晴らしかった。

職業訓練校の仲間たちのナチュラルな会話がまた心地よかったり。
代島役の松田翔太は個人的にはベストアクト。いいヤツなんだろうが、ちょっと怪しい的な(笑)

なんというか、白いボールがすべてを越えて彼女の元に届いたとしても。
あの点差を逆転することはできないのか。
それでも。。。

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学生なんすけど、一緒に競輪行きません?
posted by 味噌のカツオ at 00:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする