鷹野毅、伊藤仁、田我流、尾崎愛
中心街では‘シャッター通り’も増加してきた山梨県甲府市。不況の土木建築業界で働く精司。そこに作業員として派遣されてきた保坂。そして猛。
仕事帰りにタイパブに通う精司は、一時タイに住んでいた保坂と意気投合。妻が怪しげな商売に手を出し始め、ますますタイ人のホステスにのめり込む。
HIPHOPグループの猛は、そんな精司らの姿に違和感を覚え、外国人を敵視する。
この「サウダーヂ」はキネマ旬報誌にて、2011年邦画ランキング6位に選ばれた作品。
タイトルの「サウダーヂ・Saudade」というのは山王団地という言葉が訛ったものではなく・・・ポルトガル語で‘郷愁’を意味するもの。
また‘憧れ’や‘情景’といったニュアンスも含まれるそうです。
舞台となっているのは山梨県甲府市。物語のキーワードは 土方、HIPHOP、ブラジル人、タイ人、過疎、世代、天然水、etc・・・
そこに暮らす様々な人々を追ったヒューマンストーリー。ちなみに山梨に於いて活動する空族(kuzoku)というグループの製作で、出演者も その街に暮らしている人たちが中心だとか。
その分、一つひとつの事象がとてもリアルに受け止められます。言葉なんかも方言を交えてね。
言ってる意味はわからんけど、ニュアンスは伝わるぞ みたいな。
実際に映画を見た人の中にも 似たような体験をした人、聞いた人もいるでしょう。実家がそんな感じだったとか、よくそんな会話するとか。この空気感が手に取るようにわかるとか。
ぶっちゃけ ストーリーの中には コレといったドラスティックな出来事は起こりません。でも当然 時系列と共に変化は起こります。
その過程を2時間47分という長い時間をかけて、じわじわと体験させてくれる映画です。
で何やらこの‘じわじわ’というのも曲者(くせもの)という気がしてね。
高い温度の炎が体に触れると、表面の皮膚が火傷を負ってしまいます。が こたつみたいな熱を体に長時間当ててしまった際に発症する低温火傷って、皮膚の内面が火傷を負ってしまうんですよね。
表面だけであれば皮膚の移植など わかりやすい対処法もありますが、じわじわを肉体を蝕む低温火傷の方がタチが悪いなんて聞きます。
このストーリーに描かれている‘変化’というのもそれと同様で、その街で日々を生きているうちに、じわじわと取り返しのつかない状況に陥っているような。
映画としてのダイナミズムは乏しいかもしれませんが、だからこそリアルなヒリヒリ感を味わえるんだと思います。
とにかく じっくり、じわじわと変化していく日常を追っただけあって尺は長めの2時間47分。
グイグイとまでは言わないものの、観客の身近な出来事かのごとく、無理なく見入ってしまうのでそんなに長くは感じなかったし。
人はどこからやってきて、どこへ行くべきなのか。
国、国籍だけでなく、職業であったり趣味であったり。もちろん男女の関係も当てはまるかな。郷愁・憧れ・情景などの要素を考えさせられつつ。
でも長い人生の中の ほんのひと夏だけしか描いていないのでね。彼らがこれからどこへ向かっていくのか。
そんな映画体験のできる一本でした。

