2014年02月09日

小さいおうち

山田洋次
松たか子、黒木 華、吉岡秀隆、倍賞千恵子
東京郊外のモダンな赤い三角屋根の小さなおうち。旦那様・雅樹、奥様・時子、坊ちゃんが穏やかに暮らす平井家で、田舎から出てきた純真な娘・タキは女中として働く。
しかしある日、雅樹の部下である板倉という青年が現れ、時子の心はあやしく揺れ動く。

「男はつらいよ」でおなじみの山田洋次監督。82歳にして82本目の作品になるんだとか。

映画は ばあちゃんが亡くなるというところから始まります。何やら「永遠の0」とかぶる設定だけど(苦笑)

生前。生涯独身を貫いてきたばあちゃんが自叙伝を書き、それを読んでは批評をしていた又甥。しかし ばあちゃんの自叙伝は、ある出来事以降を書くことなく終わってしまっている。
が ひょんなことから事態が動き始め、亡きばあちゃんの思いが、残された人々によって明かされていきます。

昭和11年の東京。戦中と言っていい時代設定ですかね。
たいがい その当時を舞台にした映画って、戦争は悲惨なもので そこに生きる人々も貧しくつつましやかに暮らしていたとなるものです。
バリバリの戦後生まれのボクだって「欲しがりません勝つまでは」みたいなイメージで考えちゃうんだけど、この映画はそこから違いましたね。

この「小さいおうち」に登場する平井家は、女中さんと共に親子3人で普通の暮らしをして、着るものなんかもおしゃれな感じの家庭。
そして映画の核となってくるのは 戦争どころか“恋愛事件”なんですよね。

恋愛というものをどう描写するのか。この映画はその辺りがスゴくイイんですよ。
タキちゃんが時子の想いに気付く帯のエピソードとか。人妻が着物を着て出かけて 少し髪を乱して帰ってくるとか。少し汗ばんだ額だとか。

そこで実際に何が行われたのかはわからないんだけど、想像力でエロチシズムを刺激させるという表現。
そして物語はあくまでタキちゃん目線で。その家に仕える女中さんの立場でありながら、見てはいけないものを見てしまったと。気付いてはいけないことに気付いてしまったと。
今どきの映画にはないこのドキドキ感を共有させるというのが絶妙なんですよ。

この映画の予告編で、タキちゃんと時子のとあるワンシーンをそのまま見せるものがありました。
その予告編を見ても これがどんな映画なのか、どんなキャストが出演しているのか全く分からなかった予告編。
でも 事前にあれを見たうえで実際の作品を見て。あのワンシーンがどれだけの重みを持っているのかがヒシヒシ伝わってきました。
そのやり取りを受けて、あの手紙が書かれることとなります。

まるでタイムカプセルのような役割となってあの当時と現在とをつなぎ、それぞれのそれからが明かされていくのですが…
その中で“不倫”という単語が出て、ちょっとドキッとさせられました。
とても艶っぽく思えた“恋愛事件”も、今の時代で“不倫”と言ってしまってはドライなもんだなと。

「わたしは長く生き過ぎた」といって涙にむせぶばあちゃんの真意は、映画の中では明確には提示されないのかな。
でもその分、受け止めがいのある想いなのだと思いました。

本筋は“恋愛事件”のストーリーですが、それらの人々を引き裂くこととなった戦争という存在も、心に引っかかりました。
特に、あの おうちが砲撃を受けて煙に包まれていく場面は涙なくしては見られなかったです。

それ以上の映像を出さないことでその奥のドラマを想起させる。やはりここでも観客の想像力に訴えかけてきます。つらかったですよ。
いずれにせよ、予想以上に響いてくる作品でありました。

さて、失礼を承知で言えば わたくし的に 松たか子さんは時々イマイチに見える女性であり、吉岡秀隆は決して惹かれる男でもないんだけど。
それでも この作品の中では、それぞれが魅力的に描かれておりました。
役者の演技力もそうでしょうし、監督の手腕でもありましょう。

そして黒木華さんがまたいいんだ。まだ23歳らしいんだけど、派手さはなくとも不細工なわけでもない。「この人なら任せられる」と思わせる女中さんの役はハマり役でした。

最後に、寅さんの妹のイメージの強い倍賞千恵子さんが、ものの見事におばあちゃんだったのはショックだったです。
これもどこまでリアルで どこからが役作りなのか?だけど、一流の女優ってもんを見せてもらった気がしました。

あっ、ばあちゃんの家にかかってた 小さいおうちの絵は、だれが書いたんだろう?

Chi-Ou.JPG
2階建てで縁側のある“小さい”おうち
posted by 味噌のカツオ at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | タ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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