2016年10月12日

淵に立つ

深田晃司
浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、太賀
小さな金属加工工場を営む鈴岡家に 夫・利雄の旧友・八坂が現れる。利雄は彼を雇い入れ、自宅の空室を提供。誠実で礼儀正しい八坂の姿に、妻の章江も、娘の蛍も彼に好意を抱いていく。
しかし八坂は 家族に残酷な爪痕を残し、姿を消してしまう。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作。
こう言ってはなんですが。決してメジャーな監督でもないし、有名どころも浅野忠信しか出ていないし(しかも前半でアウェイ)。
しかしながら映画としての見応えは超・ヘヴィー。

もちろんクオリティの高さと後味の良さは必ずしもイコールではないのですが。

夫、妻、娘。ある意味 平凡な家庭に、素性のしれない男がやって来ます。
そうは言っても 我々観客的には“絶対に怪しい”感を受け止めながらでありまして。
変な話、家族に浸透していくくだりは 眠気すら漂ってきちゃったんだけど。

そして中盤。案の定 その奥に隠された、もうひとつの顔をあらわにしていきます。
“やっぱりか”というところでもあったんだけど。

しかし その男の残した傷というのが、いくらか想像以上の酷さを伴っていて。
やぁ、見ていて、ひたすら辛かった。

夫は男を探し出して、せめて真相を聞き出したいと願い。妻は 過去は忘れて前に進みたいと願い。
そんなところに、男の“手がかり”が示されたことで…

この手の作品って、どこかに救いなのか希望なのかあるものだけど。この映画には それが無いのかな。
しかも、元々あった幸せを壊すではなく、元々絆があったのかすら怪しく見えて。

初めから危うかった家族というコミュニテイ(厳密には夫婦関係か)を、さらにズタズタにしてみせるような。
なんなら よくもまぁこんな残酷な物語を書けるよなと。そこまで思っちゃうね。
ちなみに原作は深田晃司監督自身の小説ということですが。

役者陣は全員素晴らしかった。
あの飄々とした雰囲気と怖さの中間をキープした存在感は浅野忠信にしか出せないかも。
古館寛治さんは サブのポジションが多いし、メガネとヒゲに隠されたぼんやりしたキャラが大半なんだけど。今作では 見事に話の軸となっておられて。

そして筒井真理子さんの前半に見せる色気を残した母親としての顔。そして後半は娘を思うがあまり心身ともに変わり果てた姿を披露されてて。
なんでも8年後の撮影に入る3週間のインターバルの間に13kg体重を増やしたそうで。
あの変わりようは強烈な説得力を保ってみせましたね。

ストーリーの鍵となる難しい役どころだった太賀くんも良かったですね。
イケメンでないと見向きされない世の流れはありましょうが。彼のような一見 普通の若者で。しかも芝居の上手いのは今後注目ですよ。

まぁ演技が上手いとは言いましたが。正しくは振る舞いやセリフが不自然じゃないという感じで。
太賀くんも古館寛治さんも ふとした瞬間に上手さを感じさせるんよね。

前半と後半の8年の間に、この家族に何が起きてどんな変化があって。
その描かれていない部分が伝わるから、見ていてより辛くなってしまいます。
でも やっぱり、初めからつながりは薄かったように思うけどなぁ。

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早食いは刑務所の名残り
posted by 味噌のカツオ at 01:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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