2016年11月05日

湯を沸かすほどの熱い愛

中野量太
宮沢りえ、杉咲 花、篠原ゆき子、オダギリジョー
銭湯を営む幸野家。しかし 父が1年前に出て行って以来、銭湯は休業状態。母の双葉は持ち前の明るさと強さで、娘の安澄を育てている。しかし双葉がパート先で倒れ、検査の結果末期ガンの告知を受ける。
それから双葉は“絶対にやっておくべきこと”を決め、実行していくのだが…

このタイトルのセンスに文字フォント。決してピンとこなかった。
あらすじ読んでも、銭湯を舞台にしたホームコメディかと思ってた。
わたくしと同年代の宮沢りえさんも“見たい”という引きは弱い女優さんなんですよ。

そんなこんなで全くノーマークの作品だったのですが。
いやいやいや〜やられちゃいました。

「序盤から ずっと泣きっぱなしだった」なんて感想も事前に目にしていましたが、確かにそんな感じ。
シリアスとユーモアと“泣き”がローテーションのごとくやってきて。退屈することが全然なかったですね。

それぐらいに引っ掛かる部分がとても多くて。

銭湯に貼られた休業のお知らせに始まり。
母と娘の愛ある口論。
ホイコーロー(?)だけでなく、なんでも美味しそうに食べる娘。
無理やり連れ帰ってきた父ともうひとりの娘。
パンツをドアノブに掛けての「鮎子ここにあり」という名言。
旅先で出会った若者に「あの人から生まれてきて…」で顔を伏せる鮎子。
ところが、安澄も。
ところが、ところが、双葉も。
突然のビンタの瞬間、劇場内が「えっ?」ってなってたね。

それからカニ、手話、エジプト旅行、母の面影 などなど。
様々なミスリードや伏線が散りばめられつつ、流れるようにそれらが回収されていきます。
ホント、見事な見せ方で。

わたくし的には ラストの手前。夫と探偵さんが缶コーヒー飲みながら交わす会話が、なんとも良かったですね。
具体的なこと何も言っていないんだけど。

そんな役者陣の演技もみな素晴らしかった。
宮沢りえのとても強く あたたかい母親像。前半がそんなだったから、終盤にかけて弱っていく様がとても辛く感じました。
そして どこかゆるくて飄々としたオダギリジョーのお父さん役も良かった。

松阪桃李演じた世間と向き合うのにやや臆病な若者も雰囲気出てたし。
駿河太郎の怪しさと可笑しみを感じさせる子連れ探偵もいい感じ。

それから娘たちもね。鮎子の涙ながらのしゃぶしゃぶにはもらい泣き。探偵さんの娘もかわいかったし。
あとは安澄役の杉咲花は裏MVP。実の母娘関係を告げられて受け入れられない場面であるとか、非常に難しいシチュエーションが多かったけど、いずれも見事だったですね。
今後にも期待です。

皆に慕われながら、よくよく見ると誰とも“血”のつながっていない双葉。
でも それよりも大切なものと知っているから、あそこまで尽くすことができるんだろうね。
幸野という苗字が表す通り、家族たちから観客から、幸せにしてくれる母ちゃんだったです。

とてもいいもん見た〜という感想はありつつ。
どうしても いじめ問題の着地の仕方は、やっぱ納得できないな。ホントに陰湿なものだとしたら、アレはアレでヤイヤイ言われる行動だと思うから。

そして、ラストのあの湯は。
美談?ファンタジー?それともホラー?
見方によるけれど。

嫌悪感は全然ないのだけれど。
あんなん見せられたら、正直とまどうよね(苦笑)

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もはや りえがママだもんね
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2016年11月04日

ベイブルース 〜25歳と364日〜

高山トモヒロ
波岡一喜、趙a和、安田美沙子、小川菜摘、石田えり
漫才師を目指す河本は、高校の同級生である高山と共にNSCの門を叩く。卒業後はコンビ名を“ベイブルース”とし、新人賞を次々と獲得。将来を嘱望されるコンビとなった。
しかし 1994年秋、河本はテレビのロケ中に体調不良を訴え、入院を余儀なくされる。

ベイブルース。河本栄得と高山知浩のコンビ。
高校卒業後にNSCへ。雨上がり決死隊、トゥナイトのなるみ、ナインティナインの矢部浩之の兄・矢部美幸らが同期の7期生。
卒業後は様々なコンテストで受賞するなど若手芸人として頭角を現していきます。

印象として、河本はネタに対して結構厳しかったとか。一方の高山はポーッとした雰囲気で。
当時 ネタも見たことあるし、名古屋でレギュラー出演してた番組もあって、それとなく馴染みはあったんよね。

あるとき、ふとその番組を見たときに河本の訃報を聞きまして。
追悼VTRが流れ、高山が悲しみを感じさせることなく「河本〜ネタ帳、どこにあるんや〜」と訴えかけてたのを覚えています。

それから20年が経って、2014年に公開されたこの映画。
気になってたんだけど、DVDではありますが やっと見られました。

ちなみに誕生日が1968年11月1日。そして1994年10月31日が命日と。
ちょうど今ぐらいの時期だったんだね。

映画としては、決して面白い感じでは。そのまま二人のヒストリー。
もうちょっとユーモア入れるか、泣かせに走ってもよかったんじゃない?と思わんでも。

でも本職の監督でもないし。高山さんやし(苦笑)
それに倒れてから亡くなるまで2週間ぐらいと。泣く余裕も無いままだったのかな。

少々失礼なこと言うならば。これはこれで ひとつのメモリアルであって。
芸人としてのベイブルースを偲ぶのであれば、実際のネタを見たい思いもあったりして。

そんなこと思ってたら、エンドロールの際に ネタの音声が流れましたね。
テンポも早くて勢いのある漫才やってたんだなと、あらためて思わされました。
これが20数年前なんだよね。

劇症肝炎による脳出血。25歳と364日。ベイブルースとしての活動期間は6年も無いぐらいなのか。
もし存命だったら…とか言うのは野暮なことだろうけど。
もっと見たかったよね。ベイブルースの漫才。

今となっては、こうして思いを馳せることが、せめてもの…かな。
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2016年11月03日

何者

三浦大輔
佐藤 健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生
就職活動の情報交換のため ひとつの部屋に集まった、5人の22歳。企業に入れば特別な「何者」かになれるのか、そして自分は「何者」になりたいのか。
そんな疑問を抱えながら就活を進めるが、やがて内定を決めた人物が出てくると、抑えられていた嫉妬や本音が露になっていく。

映画化された「桐島、部活やめるってよ」の原作でもある朝井リョウの直木賞受賞作を、演劇ユニット「ポツドール」を主宰する三浦大輔が映画化。
これまでにも映画を撮ったりもしているそうですが、言いようによっては“異業種監督”でもあるのかな。その演劇的要素が作品中であり、見せ方の演出として活かされています。

就職活動と直面する5人の若者たち。もうちょっとワクを広げると、大学院生である主人公の先輩。そして主人公が意識し続けるかつての演劇仲間の存在。
それらも含めての群像劇なのかな。

これがバブル期だったらね。若者たちが就活で駆け引きしながら 恋の駆け引きもワチャワチャあって。
佐藤健と有村架純のキスシーンでエンドロール…な展開だったのかもだけど。
今どきの就活はそんなわけにはいきませんな。

基本的には買い手市場。それに翻弄されつつエントリーシートを書き綴り、わずか1分間の自己紹介で全てを量られ。
ひたすら“内定”というゴールに向かっていくと。

また表面上は和気あいあいとやりながら、裏アカという名のもう一つの顔での探り合いも。
ホント、しんどい時代だよね。

さて 現在45歳のわたくし自身は、今作のような就活のリアルは実感できないし、ツイッターもやっていないので その点の表現も100%共感できるわけでもありません。
逆に 現在の若者、あるいは同様な就活を経験してきた人たちにはある種の共感は得るでしょうけど。

ただし作品の評価としては、ぶっちゃけ微妙だよね。
例え共感を得たとしても あまりに現実過ぎて、映画で見ても感動するには至らないだろうし。もしくは あまりに現実過ぎて、ただひたすら痛みを覚えるだけという方も。

というわけで、わたくしにとっても、なんとも言い難い物語でありました…と。
その反面。。。

非常に多くの方が、この作品にやられちゃってますね。
この場合の“やられ”は胸に響いた〜ではなく、胸をえぐられたという側で。

その就活の厳しさ以上に、人間描写であったり、いやらしいまでに描かれる心の内。
こんなやつおるおる。そんなことズケズケ言うたんなや。いや、これは10年前のオレ自身や。

しかもそれらって、基本 他者と語り合ったりする部分でもないし。なかなか客観的に見る機会がない要素だったり。
そんな痛いトコを映画を使って、他の登場人物の言葉を使って指摘されることの気恥ずかしさ。
やっぱそれなんでしょうね。

感性という表現がいいのかわからんけども。この作品を見ても ただ「つまらんかった」という人。「見ててキツかった」という人。大きく分かれると思うんだけど、結局は感性の問題だと思うわ。

主人公の拓人は他者を観察・分析するのは上手いと言われつつ。大事な時にコミュニケーションの瞬発力は決して長けている方ではないよね。
その分析も言っていいこととアカンことの線引きがあって。アカンことは裏アカに記して悦に入るという。
わかるわぁ〜(苦笑)

ただコイツの弱点って、きっと冷静に他者を見ながら、自分自身の行動をコレっぽっちも客観視できないトコなんだろうな。
だからソコを突かれてグサグサなっちゃって。
わかるわぁ〜(苦笑)

そうやって一人ひとり語っていくと尽きなくなっちゃうけど。どいつもこいつもイタいわ〜と言いたくなるような。
エンターテイメントとしての映画とはまた違った意味で、何かを残す作品でしたわ。

良作が連発されている今年の邦画界にあって。
必ずしも高評価とはならないまでも、映画ファンなら見ておくべき一本でしょう。

なんか、こわいね。

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烏丸、大学やめるってよ
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2016年11月02日

われらが背きし者

スザンナ・ホワイト
ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス
モロッコで休暇中だったペリーと妻のゲイルは、偶然知り合ったロシアンマフィアのディマから、組織のマネーロンダリング情報が入ったUSBをMI6に渡して欲しいと頼まれる。
ディマと家族の命が狙われていると知り、仕方なく引き受ける二人だったが、世界を股に掛けた危険な亡命劇に巻き込まれてゆく。

元MI6(イギリス秘密情報部)の作家、ジョン・ル・カレ原作のスパイサスペンス。
これまでにも同氏の原作がいくつか映画化され、この作品も評判良さ気だったので見に行ってきました。

が、わたくしには合わなかったですなぁ。

主人公は大学教授で その妻は敏腕弁護士。
そして なにかと大声で話しかけ、豪快に笑うロシアンマフィアの男。

怪しげな雰囲気のまま、機密のUSBが登場して…というストーリーなわけですが。

そもそも冒頭の雪道でキレイなお姉ちゃんが撃たれる映像とか。
本編での登場人物らの相関関係が飲み込みきれず。また会話での駆け引きが、字幕を読むだけで理解しきれず。
誰が敵で誰が仲間で追いつこうとするうち、やがては眠気に襲われる悪循環。

ただし中盤あたりからスリリングな展開もわかってきまして。なんとなく盛り上がってきたところで クライマックスとなってしまいまして。
ほぼほぼ楽しめないで終わってしまいました。

さしあたって言えることは、ユアン・マクレガーはメチャメチャええヤツやったなと。
そんな程度で申し訳ない。

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「われらが背きし者」ってどういう意味?
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2016年10月31日

PK

ラージクマール・ヒラニ
アーミル・カーン、アヌーシュカ・シャルマ、スシャント・シン・ラージプート
留学先で大失恋し、今は母国インドのTV報道局で働くジャグー。ある日 地下鉄で黄色いヘルメットを被り神様の絵に“行方不明”と書かれたチラシを配る男と遭遇。
テレビのネタになると思い男に取材を試みると、彼は途方もない いきさつを語りはじめるのだった。

「きっと、うまくいく」の監督と主演が再タッグ。となれば、この作品も“きっと うまくいく”のではないかと。
そんな期待を込めての鑑賞。

事前情報でわかっていたのは、謎の男がインドで神様を探す…という一点。さすがにそれだけでは内容が全く読めないんだけど。
しかし 冒頭からとんでもないものが飛んできてビックリ!

これ最初のシーンでわかるのでネタバレ感に乏しいので書きますが、主人公は宇宙人なんですね。
それもあって地球上のアレコレに変な解釈をしたり。神様や宗教観が全く理解できていなかったり。おまけに あのギョロ目に大きな耳も合点がいくかな。
そのトンチンカンな振る舞いから「PK(酔っぱらい)」と呼ばれるようになります。

すると今度は いきなり舞台はベルギーへ。
テレビ制作に携わるのが夢というジャグーのパート。
彼女と恋人の存在。父親との関係。この辺りが描かれます。

それからインドに戻ったジャグーがひょんなことから PKと出会い、彼の主張に共鳴。それを訴えていくわけですが…

その主張というのは、神とは何か、宗教とは…信仰とは…
そもそも人口も多く、近隣諸国との関係から その辺りの問題はデリケートな部分もあるとは思いますが。
我々日本人はクリスマスで騒ぎ、正月には初詣に参り、近所の仏様にも手を合わせる。そもそもがフランクな(?)信仰スタイル。

なのでこの映画のタブー感や不可思議な事情は肌感覚で理解はできないのかもだけど。
でも もちろん言いたいことはわかります。そこはさすがに。

そのうえで言うならば、やはりこのストーリー展開で2時間半は長かったかな。全般的に冗長な印象はぬぐえなかった。
んで コメディの線にしても、そんなにバカバカしく笑える感じも少なかったか。

もしかしたら PK=宇宙人 というのをもっと隠しておくとか、留置所での回想シーンで観客に明かしても良かったんじゃないかな。

全体を通して、グッと感情移入できる感じでもなかったし。
終盤のネコと手紙のエピソードも「うまい」とは思ったけど、それほど泣けはしなかったしね。

前作の「きっと、うまくいく」からの流れで期待をしちゃってましたが、う〜ん やっぱそんなにうまくはいかないか!?
わたくし的にはいくらか長く感じた2時間半でした。

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インドでは そんなに車も踊ってるの?
posted by 味噌のカツオ at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ハ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月16日

永い言い訳

西川美和
本木雅弘、深津絵里、堀内敬子、竹原ピストル
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻がバス事故により亡くなったと知らせを受ける。が その時、不倫相手と密会していた幸夫は悲しむことができずにいた。
そんなある日、幸夫は 同じ事故で妻を亡くした大宮陽一に会い、ふとした思いつきから彼の子どもたちの世話を買って出る。

西川美和監督の作品って いずれも明確な着地点は明示されないんですね。
サラリと見ると、いくらかモヤモヤ感が残るのは否定しません。

でも丸わかり過ぎないトコロ、観客の心に委ねるトコロが、映画ファンから支持される点でもあるんだけど。

その手の映画ってヒリヒリきたりダークだったりものですが、いい感じの微笑ましさを配するのも西川監督は上手いですよね。
あと あまり同一の役者を起用しないのも、その都度 登場人物のキャラクターに多様性を持たせてる感じがして面白いです。
この「永い言い訳」も まさにその西川監督の“らしさ”が活かされております。

キャスティングについては、当て書きというのがありまして。ある役者さんをイメージして脚本を書くという手法なのですが。
西川監督の場合、自身の書いた原作のイメージに、より合った人をキャスティングするのが上手いんでしょうね。

この作品の本木雅弘もそうですし、竹原ピストルさんも超ハマり役。
ちょっとコワモテだけど、真っ直ぐでピュアでいくらか不器用なトラック乗り。素晴らしい(笑)

そして子どもたちの演技も良かったです。
ただしこの場合、西川監督の師匠筋の是枝監督の手法。設定だけ決めて 子どもたちには自由にさせてしまう感じの撮り方やってるみたいですね。
それなら こうなるわな〜という思いと、それで あの誕生日の鍋のシーンを撮ったのはスゴイなとも。

さて、物語の展開や登場人物の心の動き、大方はわかるんだけど。いろんな感想をチェックしても、核心的な部分について コレってのがなくて。様々な受け止め方があるのかな。

妻・夏子が あんなメールを残していた訳。またあれが本心なのか。
幸夫の妻への想いは。そしてあのメールを見て何を感じたのか。
幸夫は何に涙し、なぜあの本を記し、これからどこへ向かうのか。

それから もうひとつ気になったのが、それぞれの髪の毛の長さと、随所にある髪を切るシーンに関して。

夏子が幸夫の髪を切る場面から始まり、終盤では それまで他者には触らせなかった髪を、妻の元同僚にカットしてもらっています。
陽一の息子・真平も季節と共に 髪は伸びていくのですが。最後 中学生となった段階で 驚くほど短くなって。
娘の灯(あかり)は 自分で前髪を揃えようとしていました。父・陽一はずっと坊主だったけど(多少の伸びはあり)。

女性が髪を切ると「失恋した?」「ただの気分転換?」いろいろな意味合いを探られちゃったりするんだけど。
この映画でのそれも、人としての成長や成熟とか。何か意味があるのかな。
結局 答えは見つからないんだけどさ(苦笑)

監督の過去作と同じく、明確な心理表現や明らかな未来は提示されません。
結局 わからないことだらけなんだけどさ(苦笑)

でも アイツだってコイツだって、なんなら自分自身だって。実際の日常の中でも丸わかりの心なんて そんなにないわけで。
露骨な お涙頂戴映画がどこかしっくりこないように、明確すぎないから、より多くの観客に沁みていくのかもしれないね。

今後も西川監督の作品に期待します。
また3年後ぐらいかな?

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♪ ちゃぷちゃぷローリー
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2016年10月13日

お父さんと伊藤さん

タナダユキ
上野樹里、リリー・フランキー、長谷川朝晴、藤 竜也
書店でアルバイトをしている34歳の彩は、給食センターでアルバイトをする20歳上のバツイチ男・伊藤さんと同棲中。
そこへ息子の家を追い出された彩のお父さんが、突然転がり込んでくる。その日から、彩(34)と伊藤さん(54)とお父さん(74)との、奇妙な共同生活がはじまっていった。

タナダユキ監督の作品、わたくし初めてやな。
いろいろな映画を見てますが、邦画ってどうしても原作モノが多くなるね。小説やらコミックやら。やっぱり オリジナルの企画って難しいんだろうけど。
というわけで 今作は第8回小説現代長編新人賞を受賞した中澤日菜子の小説がベース。

当然ながら このタイトルに「ハッ」とさせられ。この3人のキャスティングに惹かれ。
34歳の女に54歳の彼氏。そして74歳の父親が絡むという設定に困惑&ワクワク。

20もの歳の差カップル。しかも二人とも仕事はアルバイト。それはどうかと思いつつ。
しかし ムダにベタベタすることもなく。小さな悩みに対し 大らかに包み込むようなアドバイスを送るオジサンの図。

今どきの女性の“年上男性幻想”を見事に具現化。
こういうライフスタイルを 理想と言ってしまう人も少なからずいるんじゃないかな。

そこへ入ってくる、絵にかいたような堅物で柔軟性の無い親父。
兄嫁じゃないけど、こんなのと同居は無理だよね。伊藤さんもホンネではしんどいんだろうなと。
しかし、ホームセンターで意気投合してしまう場面に、とてつもない説得力。
いやぁ、男って 工具とか見ると変に気になっちゃうんよね(笑)

全体のストーリー展開で言うなら 居場所を無くした親父の処遇という。ただそれだけなんだけど。
その中に配された 個性あふれた人々のキャッチボールや、中規模エピソードの数珠つなぎが程よいスパイスとなり、飽きさせない物語となっています。

上野樹里って 頑張らないキャラクターやらせたらピカイチですな。
声質やちょっとルーズな話し方もあるんだろうけど、頭で手を組んで寝っ転がる姿が一番似合う女優じゃないですか(笑)
尾行シーンもそうですが、あの ちょいユル加減がじつに魅力的なんだよね。

藤竜也演じるのが 他人の言うこと聞かず、ただうるさいお父さん。
でも元教師という設定なら、このビジュアルはアリかな。
ただ 痴呆気味?とか万引き常習犯?とか。段ボール箱のエピソードは必要ないような。少なくとも キャラ的にもストーリー的にも活かされていないような。

それから やっぱりなんだけど。伊藤さん役のリリーさんがまた素晴らしい。
まだ人生経験の浅い彩をリードし、融通の利かない高齢者のお父さんのプライドを傷つけないように導くと。あのポジションは絶妙だわ。
だからといって 全ての54歳男性があんな振る舞いできるかっちゅうと、そんなことないわけで。

趣味は家庭菜園。どこか達観したかのような、それでいてアルバイト。
伊藤さんは理想の男性像…といってはい言い過ぎかな!?

でも役としたら、リリーさんじゃないとハマらないキャラクターだよね。

さてさて。この作品を見た中で、どうしても見過ごせない点がいくつかあるんだけど。
そもそも上野樹里が34歳に見えなくって。ちなみに今の実年齢は30歳で。
そこは絵作り、感覚として ちょっとだけ厳しいかな。

序盤、彩とお兄さんがイチゴパフェを食べるシーン。設定は8月から9月のはずなのだが。
ズバリ、8月にあんな美味しそうなイチゴは出回っていないよね。
じゃあ なぜわざわざイチゴパフェ?とは思ったけど。

その後に蝉の声や 秋の虫の声や風の音。そういう季節感をしっかり作りだしてた分、最初のイチゴパフェはリアリティが薄いよね。

そして お父さんがトラブルに巻き込まれ手を負傷。
おそらく右手が使えず左手で書いたであろう、ミミズの這ったような書置きを残し、家を出てしまいます。
やっと発見された際には右手の包帯は無かったので「治った?」と思ってたんだけど。

次のシーンでは また包帯を巻いていて。おいおいおい…そのつながりはアカンでしょ。
なんなら 新たに火傷かなんかしたのかな?

とまぁ重箱の隅みたいなツッコミさせていただきましたが。
とにかく登場人物が、役者が良かった分、所々で詰めの甘さを感じてしまいました。
なんか、なんか 惜しい感じやったね。

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白い犬の娘が彩
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2016年10月12日

淵に立つ

深田晃司
浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、太賀
小さな金属加工工場を営む鈴岡家に 夫・利雄の旧友・八坂が現れる。利雄は彼を雇い入れ、自宅の空室を提供。誠実で礼儀正しい八坂の姿に、妻の章江も、娘の蛍も彼に好意を抱いていく。
しかし八坂は 家族に残酷な爪痕を残し、姿を消してしまう。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞作。
こう言ってはなんですが。決してメジャーな監督でもないし、有名どころも浅野忠信しか出ていないし(しかも前半でアウェイ)。
しかしながら映画としての見応えは超・ヘヴィー。

もちろんクオリティの高さと後味の良さは必ずしもイコールではないのですが。

夫、妻、娘。ある意味 平凡な家庭に、素性のしれない男がやって来ます。
そうは言っても 我々観客的には“絶対に怪しい”感を受け止めながらでありまして。
変な話、家族に浸透していくくだりは 眠気すら漂ってきちゃったんだけど。

そして中盤。案の定 その奥に隠された、もうひとつの顔をあらわにしていきます。
“やっぱりか”というところでもあったんだけど。

しかし その男の残した傷というのが、いくらか想像以上の酷さを伴っていて。
やぁ、見ていて、ひたすら辛かった。

夫は男を探し出して、せめて真相を聞き出したいと願い。妻は 過去は忘れて前に進みたいと願い。
そんなところに、男の“手がかり”が示されたことで…

この手の作品って、どこかに救いなのか希望なのかあるものだけど。この映画には それが無いのかな。
しかも、元々あった幸せを壊すではなく、元々絆があったのかすら怪しく見えて。

初めから危うかった家族というコミュニテイ(厳密には夫婦関係か)を、さらにズタズタにしてみせるような。
なんなら よくもまぁこんな残酷な物語を書けるよなと。そこまで思っちゃうね。
ちなみに原作は深田晃司監督自身の小説ということですが。

役者陣は全員素晴らしかった。
あの飄々とした雰囲気と怖さの中間をキープした存在感は浅野忠信にしか出せないかも。
古館寛治さんは サブのポジションが多いし、メガネとヒゲに隠されたぼんやりしたキャラが大半なんだけど。今作では 見事に話の軸となっておられて。

そして筒井真理子さんの前半に見せる色気を残した母親としての顔。そして後半は娘を思うがあまり心身ともに変わり果てた姿を披露されてて。
なんでも8年後の撮影に入る3週間のインターバルの間に13kg体重を増やしたそうで。
あの変わりようは強烈な説得力を保ってみせましたね。

ストーリーの鍵となる難しい役どころだった太賀くんも良かったですね。
イケメンでないと見向きされない世の流れはありましょうが。彼のような一見 普通の若者で。しかも芝居の上手いのは今後注目ですよ。

まぁ演技が上手いとは言いましたが。正しくは振る舞いやセリフが不自然じゃないという感じで。
太賀くんも古館寛治さんも ふとした瞬間に上手さを感じさせるんよね。

前半と後半の8年の間に、この家族に何が起きてどんな変化があって。
その描かれていない部分が伝わるから、見ていてより辛くなってしまいます。
でも やっぱり、初めからつながりは薄かったように思うけどなぁ。

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早食いは刑務所の名残り
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2016年10月11日

少女

三島有紀子
本田 翼、山本美月、真剣佑、稲垣吾郎
それぞれが闇を抱える高校2年生の由紀と敦子。転校生の紫織から「親友の死体を見たことがある」と聞き、ふたりは人が死ぬ瞬間を見たいと思うようになる。
やがて夏休みになり、由紀は小児科病棟で、敦子は老人ホームでボランティアを始めるが…

原作は湊かなえの小説。これまでにも「告白」や「白ゆき姫殺人事件」が映画化されております。
それらは それなりに話題にもなってましたが。今作は巷の評判がイマイチみたいですね。実際わたくしが見に行ったとき、他に1人しか客おらんかったし。

ぶっちゃけさ、みんな わざわざ金払って暗〜い映画を見たくないんだと思うよ。
作品の良し悪しはさておき、暗いの見たくないんでしょ。

そう言いきれるぐらい、チラシから予告編から辛気臭さが漂ってて。
本田翼が山本美月をジワジワいたぶって殺す映画なんか…ねぇ。

というとこですが。
実際には そんな感じの映画でもあったり、なかったり。
少なくとも あんな笑顔が見られるとは…と思ったわけで。

んで逆に「人が死ぬところが見たい」と思って見に来た人には、ちょっと違和感あるかも。
こういう書き方すると なんだか誰にも見向きされなさそうな作品だよね。

でも、でも、考えようによっては「聲の形」にも通じるようなテーマ性もあって。わたくし的には そんなに悪くはなかったです。

事前のイメージとは違って 友情だとか、前に進もうという思いだとか。
終盤、全部の登場人物の関係性がつながっていく展開は、映画的にも(なんとなく)面白かったし。

そして男性目線で言えば、本田翼が山本美月をじっくり見られること。
二人が手をつないで駆けていくスロー映像は…よかったです。

冒頭に、舞台・お芝居のワンシーンのようなものが出てきます。
その時点で、これはお芝居の延長なんだなと思えばすんなりと入っていけるでしょう。

そもそも三島有紀子監督は、かつて「しあわせのパン」で沁みる作品を作ってて。
ところが 続く「ぶどうのなみだ」はリズム感の悪いファンタジーで全く受け入れられず。

それを思えば今作は、その中間かなぁ。
なんというか、我々が生きている社会とはちょっと違う日常ベースで描かれてるので、真正面から受け止めようとするといくらかしんどいね。

本田翼演じる由紀がどんなキャラなのかは、一貫性が無く見えて、少々つらいな。
闇の中から半開きの眼差しで全てを見てるのかと思いきや、普通に可愛らしい笑顔もみせるし。
そもそも現在24歳の本田翼と 25歳の山本美月が女子高生役なんだから。
全部受け入れられる人じゃないと楽しめない映画かな。

最後に、稲垣吾郎がいい雰囲気もってて。
自身も映画好きというのは聞きますが。映画俳優としての吾郎ちゃん。今後も期待したいですね。

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まさかのタッチー&昴
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2016年10月07日

Every Day

手塚 悟
永野宗典、山本真由美、倉田大輔、こいけけいこ
ある朝。晴之の目の前に、交通事故で昏睡状態にあったはずの恋人・咲が現れる。「時間を1週間もらった」と話す咲は、いつものように弁当を晴之に渡す。
当たり前だった2人の日常が、特別なものとなって始まる。

あらすじを読んで 面白そうだったので見てきました。
それこそ事前に設定を理解していないと、冒頭のやり取りは意味不明になりそうだけど。

スクリーンを見て「あっ」と思ったのが主演の永野宗典。
「サマータイムマシン・ブルース」に出てたなぁ。確かにチラシにもヨーロッパ企画に在籍し〜って書いてあったね。

この作品を見ていて何気に感じたのがキャストの自然さ。
咲のお父さん。会社の同僚たち。みんな クサさのかけらもなく。めちゃナチュラル。
特に咲さんの振る舞い。やさしさが滲み出ていて、どんどん愛おしくなっていきましたわ。

ただ、その中にあって、主演の永野宗典が気になっちゃった。
うまい。うまいんだけど、どうしても舞台役者っぽさが出てるような。
あるいは ひとつひとつのリアクションやセリフが ちょっとづつ面白く見える。

やぁ、実際にそういうノリのサラリーマンの方もおるかもですが、この役柄、シチュエーションのなかにあっては、もうちょっとだけ抑え気味でも良かったんじゃないかな。

あとはオフィス内での弁当のやり取りだとか、離婚式のくだりなんかが いくらか雑に思えてしまったこと。
そしてチョイチョイ登場するお弁当が どれも同じように見えたり、あまりおいしそうでないというのはマイナスかな。わたくし目線で言うと。

そういうトコロに手を抜かないからこそ、説得力が増すと思うんだな。

一方で、BGMに使われているピアノがキレイでしたね。
音楽を担当した haruka nakamura さんの曲を手塚監督が聴いたことが、今作の始まりだったとのことで。これは間違いなく 映画支えた音楽でありましょう。

それから白いページをめくっていく演出も 効果的に配されていましたね。そこにあった写真もキレイで印象に残ります。

そして本編の終盤のやりとり。
大前提、僕らは悲しい方向性を感じながら、あの二人の会話を聞いていると。
正直 もしかして…との期待をほんのちょっとだけ感じながら。

そんな切ないストーリーでした。
でもでも、あえて厳しく言うならば、なんか惜しいかな。
もうちょっと深められたんじゃないかなと。
求め過ぎかな!?

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離婚式のブーケの意味合いって?
posted by 味噌のカツオ at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ア行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする